コラム

料理人・江舟航とめぐる台湾の南国ライフー3 バナナの香りにあふれる旗山と辦桌文化

台湾・高雄にデザートスタジオ「日食生活」を構え活動する江舟航(ジェイミー・ジャン)。

台湾の食文化の発展にも力を入れ、台湾全土の学校での講演やワークショップを行う傍ら、料理講師等も務めています。

ジェイミー自己紹介写真

2017年の日本のフェスイベント『森.道.市場』に出店したことをきっかけに、日本との交流も開始。

スイーツや料理にとどまらず、南台湾を中心に台湾の文化や見どころなどを伝えています。

そんなジェイミー・ジャンの目を通して触れる台湾。
第3回は現在でも地元で人気の観光地「旗山」(日本語読みはチーシャン)地区を紹介します。

ーー

友人が高雄を訪れ、そしてその友人が市街地から離れて郊外の自然な純朴さを感じたいと考えるなら、ぼくはまず「旗山」(チーシャン)に出かけることを薦める。

高雄の中心部からそんなに離れていなくて、交通の便が良いこと以外に、実はぼく自身の成長の過程に「旗山」が深くかかわっているのもその理由のひとつだ。

旗山武德殿

ぼくの故郷は高雄の「六龜」(リゥグイ)。市街地からはなかなか遠く、山間の辺鄙なところにある。対して当時「旗山」は、とてもにぎやかで活気があった。
大通りも小さな路地にもおいしいものや様々な店が立ち並び、田舎の子どもの好奇心を存分に満たしてくれた。

「旗山に出かける」そう言うは易しだ。でも子どものぼくには簡単なことではなかった。
学校のテストの成績がとても良かった時、もしくは旧正月前に新しい服を買いに出かける時なんかに、ようやく母はぼくをバスに乗せてくれて、そしてご褒美をもらうことができた。

でも、例外もある。ぼくは小学生のころ合唱団に入っていて、そして「旗山國小(旗山小学校)の中山堂は各学校が集まってコンクールを行う会場だった。

旗山國小

コンクールが開催されると、エアコンもついていなくて、ガソリンのにおいが充満するような古い型の路線バスに乗って出かけていた。

メンバーでいっぱいの車の中で僕たちはちょっと興奮気味に「快樂向前走」(日本語版:愉快に歩けば)を歌っていた。
コンクールが終わった後で旗山老街を歩いて、ご飯を食べることを楽しみに心を弾ませていた。純粋な少年の懐かしい遠い記憶だ。

ただようバナナの香り

歴史を感じさせる華麗な建築物が立ち並ぶ「旗山老街」(チーシャンラオジエ)をのんびり歩いていると、かつてこの街がとても繁栄していたことが伝わってくる。

旗山老街

建物の作りが華麗な他にも、ここにはバナナケーキやバナナエッグロール、昔ながらのバナナかき氷などのバナナの加工品がたくさんあって観光客の食欲をそそっている。

旗山香蕉蛋糕
昔から、旗山はサトウキビやバナナが栽培されていて、土壌と水質の良さから他の地域のものと比べて甘く香りもよかったという。

そして産業革命の後は砂糖に対する市場の需要が増大し、価格も徐々に値上がりしたことから旗山的の糖業も注視されることになる。
政府は旗山に製糖工場を建設し、大規模な製糖を始めた。

旗山の砂糖はロンドンで開催された砂糖品評会で第一位を獲得しただけでなく、地方経済の発展に大きく寄与した。

バナナの栽培は1903年に初めて日本に輸送された後、大きく動き始める。バナナの経済的価値はとても高く旗山の農家にバナナ栽培ブームが起こり、たくさんのお金持ちが誕生した。
当時、旗山駅からはおびただしい数のバナナ箱が高雄港へ輸送され、そこからさらに各国へと輸出されていた。

旗山は皆に「バナナの城」と称されるようになった。
今でも多くの台湾人はバナナと言えば旗山のものが一番有名だと言うだろう。

駅と製糖工場跡はすでに博物館とクリエイティブパークに姿を変えてしまったが、それでも緻密な建築技法から当時の華やかさをうかがい知ることができる。

旗山車站

 

「意麵」には2種類あるって知ってる?

お昼ご飯の時間になったので、ぼくはよく行く「朝林冰果室」(チャオリンビングオシー)へ行き、木瓜牛奶(パパイヤミルク)を買い、「宜芳小吃」(イーファンシャオチー)で昼食をとった。

朝林冰果室

店のおススメは「意麵」(意麺/イーミェン)。

宜芳小吃
ちなみに意麵には同じ名前だけれど口当たりも外見も異なる2種類の麺がある。「鍋燒意麵」(グォーシャオイーミェン)や台南の有名な「鱔魚意麵」(シャンユーイーミェン/田うなぎ意麵)はどちらも油で揚げた、おわん型の形状の黄金色のもの。
でも、屋台や食堂の「意麵」は塩水を加え、一般的な麺よりも口当たりを弾力があるものにした白っぽい麺だ。

伝統のある麺なら「老街」にほど近い「秀明豬舌冬粉」(ショウミンジューシャートンフェン)も人気がある。

秀明豬舌冬粉
ぼくみたいに豚の「タン」は食べないという人は「豬頰肉冬粉」(ジュ―ジャーロウトンフェン/豚頬肉の春雨スープ)を選ぶのもおすすめ。これも同様においしい。

 

一番台湾らしい台湾料理:辦桌(バンドー)

ご飯の後は友人を訪ねて近くの「金葉摸油湯」へ。
ここは台湾の「辦桌」(中:バンジョウ/台:バンドー)を行っているスタジオで、結婚を決めたカップルへの試食や披露宴の料理メニューを決めたりする。

友人の呂昭輝くん夫妻の家はずっと辦桌にたずさわっていて、彼らで三代目になる。

夫妻二人照

ふたりを訪ねた時はちょうどお客さんの予約した年夜菜(ニェンイエツァイ/旧正月料理)作るのに大忙し。

新年限定発売のイセエビサンドウィッチは食指が動く、ぜひとも食べてみたい逸品。

龍蝦三明治
そしてイセエビサンドウィッチは辦桌料理では外せない定番の料理でもある。

「辦桌」は台湾特有の文化で、廟の祭祀、家族の誕生日、ウェディングなどで見ることのできる「ケータリング」の形態だ。

料理をするのには適さない屋外で、雨にも風にも負けず、太陽のような暖かな真心で豪華な料理を提供する。

ぼくは「辦桌」の持つ雰囲気がとても好きだ。

皆が大きな赤い円卓に座って、おいしい食事を楽しみ、新郎新婦を祝して乾杯し、プロの歌手やミュージシャンがパフォーマンスをする舞台をみる。そして時たま現れる、お酒でいい気分になり舞台に飛び入りしちゃうお客さんを心のどこかで期待していたりする。

これは「辦桌」だからこそ起こる楽しいハプニングだ。

この20年くらいでたくさんの結婚式場やホテルなんかができて、豪華な装飾と食事が消費者を引き付けるようになり、「辦桌」(バンドー)は都会での競争に負けてしまった。

友人は人口が減りつつある郊外地域で「辦桌」文化が消滅してしまうという危機感を覚えた。
それで、有名なマルシェやアートスペース、芸術祭などと協力し、できるだけたくさんの台湾人に「辦桌」の持つ芸術的な側面、その文化の奥深さを知ってもらおうと試みている。

だから、もし君が街で長い長いテントが設置されていて、その先にステージトラックがあるのを見かけたら、ぜひそのトラックのほうまで行って辦桌の独特の雰囲気と魅力に触れてみてほしい。

辦桌實景

古民家にあふれる甘い味わい

夕暮れ時、ぼくは天后宮の傍にある「咕便所コーヒー」(グーベンスオコーヒー)を訪れる。
ここは古くは教育施設として用いられた建物で、それを改装して作られたカフェになっている。

咕便所外觀カウンターでは店長のコーノ式のハンドドリップの技術を見ることができる。
ここでは時の流れも一滴、一滴落ちてくるコーヒーのようにゆっくりしている。
咕便所咖啡

もしくはすこし歩いて、友人の郭人豪さんが営んでいる有名なかき氷屋「常美冰店」をおとずれるのもいい。

常美冰店外觀

お店の看板メニューのかき氷を1つたのむと、このあたり特有の「バナナ清冰」と様々なトッピングが口の中で何層にも味を作る。

常美綜合冰

それはあの懐かしい合唱コンクールで耳を澄まして聞いたハーモニーのようでもある。
そして灼熱の南国の午後に甘さとさわやかさをプラスしてくれるんだ。

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旗山へのアクセス
公共交通機関利用:台湾高速鉄道(高鉄)左營駅より「旗美E02」國道快線バスに乗車。「旗山轉運站」下車。所要時間40分程度

店舗等情報

1旗山車站(糖鐵故事館)(旗山駅跡/シュガートレインストーリ館):高雄市旗山區中山路1號
https://cishanstation.khcc.gov.tw/home02.aspx?ID=$1001&IDK=2&EXEC=L
火曜定休 月・水~金10:00~18:00、土日祝10:00~19:00 チケット販売は閉館30分前まで チケット30元(特別価格2021年12月末まで)

2 旗山老街:高雄市旗山區中山路近辺(googleマップ参照)
https://goo.gl/maps/JJDHLxeFYFfhXWoe8

3 旗山糖廠(旗山製糖工場・現在はアイス等の製造工場・および見学可能な公園):高雄市旗山區忠孝街33號
https://www.taisugar.com.tw/chinese/Attractions_detail.aspx?n=10048&s=33&p=011729

4 朝林冰果室:高雄市旗山區永平街83號
火曜定休 営業時間:9:00~20:00

5 宜芳小吃:高雄市旗山區中山路37號
月曜定休 営業時間:9:30~21:30
https://goo.gl/maps/q6GAevw6WGKUVhoF6

6 秀明豬舌冬粉:高雄市旗山區永平街41號
月曜定休 営業時間9:00~17:00
FBページhttps://www.facebook.com/sm3542/

7 金葉摸油湯:高雄市旗山區復新街44號
高雄で有名な「高雄內門辦桌-翔龍筵席」が始めた新しい試み
※ケータリングメインのため現在(R3 ,4時点)店舗では食事提供なし
https://www.facebook.com/JinYeWeddingEvent

8 咕便所コーヒー:高雄市旗山區復新街16巷5之1號
火曜定休 営業時間:平日13:00~19:00、休日10:00~19:00
咕とは自身のこと、便所は毎朝の習慣、コーヒーも同じという意味で名づけられた店舗とのこと。
https://www.facebook.com/kuokuoyicoffee/

9 常美冰店:高雄市旗山區文中路99號
常美冰店FBページ
水曜定休 営業時間 9:00~18:00

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江舟航(ジェイミー・ジャン)

デザートスタジオ『日食生活』の代表兼パティシエ。著書に『土文青、洋菓子』などあり。高雄を拠点に、食文化の発展に力を入れ、台湾全土の学校における講演ツアーをはじめ、講師等も務める。2017年には、日本のフェスイベント『森.道.市場』に出店。菓子職人として、日台食文化の交流を深めていく。

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