コラム

実践!木村一心の台湾でまちづくり。第6回 地方創生編(前編)

台湾に移住して、現地のディベロッパーに設計士として所属しつつ、 台中にてアートギャラリーを運営している木村一心 (きむらいっしん) さん。

木村一心写真

台湾各地で手掛けた物件と連携し、展示やイベントを開催される一方、設計だけでなく建築の運営にまで携わっています。

そんな木村さんの目を通して触れる、台湾の建築、アート、デザイン。最終回は「地方創生」について、ご紹介します。

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こんにちは、木村一心と申します。
台湾に7年住み、まちづくりに携わる仕事をしています。
リノベーション、歴史建築、地方創生などをテーマに、自身の体験を踏まえながら、台湾のまちづくりについて紹介していきたいと思います。

これまで、リノベーション編、歴史建築編、地域コミュニティ編、オンライン編、アート編と書かせていただきました。
最終回の第6回は地方創生編というテーマで紹介させていただきます。どうぞ宜しくお願いします。

台中から地方都市へ

私は自身の会社で、アートギャラリーの運営を中心に行っておりますが、コラム第1回と3回でご紹介した台湾のディベロッパー、范特喜微創文化*1にも所属し、リノベーションや地方創生の仕事にも携わっております。

台中市西区の開発の成果が台湾全土で知られるようになり、他の地方都市からもまちづくりの相談が来るようになりました。

第6回前編では、台中郊外から他県の奥地まで、台湾にはどんな地方創生案件があるのか、いくつかの例をあげてご紹介します。

台湾西部の都市、宜蘭(イーラン)県で廃墟化した日本時代の木造建築を実測する木村

田園風景の中に佇む廃墟群-清水(チンスイ)

台中市内から車で約1時間の場所に清水(チンスイ)という街があります。
田園風景が広がる清水には、日本時代に日本海軍の燃料工場の幹部の宿舎として使用されていた集合住宅が廃墟として残っています。

終戦後は台湾の空軍の関係者が居住していたのですが、地震などの影響で、建物が老朽化し、行政が住民を近くの高層マンションに移住させたことによって、無人の廃墟となりました。

日本時代、海軍の燃料工場で働く幹部の集合住宅として使用されていた

野良犬などが住みつき、街の雰囲気が悪くなってしまったことを受け、行政が范特喜微創文化に数年間の開発を依頼しました。

ここでは数件のリノベーションと、プロモーションイベントを行い、清水眷村文化園區*2という場所をつくりました。
行政が自ら管理を行う前に、私たち民間企業に、運営と空間づくりのお手本を見せてほしいという案件でした。
現在は行政主導で運営が行われ、少しずつ地域住民が訪れる場所へ変化してきています。

清水眷村文化園區の中の一つの建物(范特喜微創文化の拠点として使用)

復元された日本木造家屋-斗六(ドウリョウ)

台中より南に位置する地方都市、雲林(ユンリン)県の斗六(ドウリョウ)という街は、活気ある市街地という印象ですが、台北や台中と比べるとローカルな雰囲気です。
斗六には、日本時代に警察署職員の住居として建てられた木造建築が数件残されています。

斗六雲中街生活聚落(日本時代の警察署職員の住居)

斗六雲中街生活聚落*3と名付けられたその場所は、雲林の行政が自ら復元し、管理していました。

しかし建物は綺麗になったものの、行政機関による運営ではあまり活用されなかったため、その権利を范特喜微創文化に委託しました。このプロジェクトは清水のケースと異なり、後に行政主導で管理する予定はないようで、数十年単位の契約で、私たちに運営を託しています。

斗六雲中街生活聚落(屋外イベント開催時の様子)

現在進行中のプロジェクト-九曲堂(ジョチュタン)

2021年、現在進行中のプロジェクトです。
敷地は、高雄駅から電車で約30分の郊外に位置する九曲堂(ジョチュタン)という街にあります。
この街の玄関・九曲堂駅の側に、半分廃墟となった長屋形式の集合住宅があります。この土地は日本時代が終わった後、台湾の鉄道会社によって引き継がれ、その社員宿舎が建てられました。

上記の2つの例とは異なり、建物は民間企業が所有しています。行政が九曲堂の街の発展のために、これらの建物の開発を鉄道会社にお願いしているという状況です。

九曲堂/かつて鉄道会社の社員宿舎だった建物

鉄道会社にとっては、資金的にも、労力的にも、自主的に開発していくのは難しいようで、今回行政が鉄道会社と交渉して、敷地の中の1軒(九曲堂駐在所)*4の運営を范特喜微創文化に委託しました。

その1軒を良い事例とすることで、今後行政と鉄道会社でエリア全体を開発していけるよう、話を進める流れになっています。

九曲堂の敷地の中で修繕した1軒(九曲堂駐在所)

以上のように、地方創生案件は、地域ごとに行政との関係が異なります。前編では各プロジェクトについて紹介させていただきました。

後編では、現地で実際に何をしているのか、運営方法を紹介します。

(後編へ

参考:

※1范特喜微創文化

https://fantasystory.com.tw/

※2 清水眷村文化園區

https://www.facebook.com/art436/

※3 斗六雲中街生活聚落

https://www.facebook.com/YunzhongStreet/

※4 九曲堂駐在所

https://www.facebook.com/Fantasystory99

 

 

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木村 一心

木村一心 1988年茨城県生まれ。東京理科大学大学院 理工学研究科 建築学専攻卒。台湾に移住して、現地のディベロッパーに設計士として所属しつつ、アートギャラリーを運営する会社を経営しています。

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