コラム

日台交流 ・日本×高雄食文化ワークショップー穭の高雄紀行(3)

2024年1月、高雄の料理人・パティシェである江舟航(ジェイミー・ジャン)氏が「日本料理人舊城飲食工作坊」というイベントを開催しました。

イベントの内容は大まかに下記の3点。

ジェイミーの住む高雄・左営に日本から料理人を招き左営を中心に高雄各地を巡りその食文化や食材の特徴を知る。

各地を巡りながら食材を集め、集めた食材と高雄でのインスピレーションを元に日本の料理人が高雄の人々に料理をふるまう。

さらに料理や⾷材の特⾊、左営との共通点や違いについてジェイミーと日本の料理人とでトークショーを行う。

今回ジェイミーから招へいを受けた穭(ヒツジ)さんにイベント期間中の様子をまとめてもらうことにしました。

台湾にも詳しい穭さんの綴るイベント旅記録。

丁寧に丁寧に綴ってくださっています。
3日目は高雄市の郊外へ。

3日目。高雄郊外の食文化に触れる。

バナナの街へ

左営から一路北東へ進路を取り、旗山、美濃、六亀へ。

まず最初に訪れた旗山(チーシャン)は最も人気のある老街(※1)の一つで、夏場は大変な賑わいを見せるのだそう。

ランドマークとも言える旗山車站(チーシャンチャージャン)は台湾糖業鉄道の駅として1913年ごろに作られ、サトウキビ、バナナ、タバコ、石灰などの物資を輸送したり住民の通勤通学の足になったりと、旗山の発展に寄与した。

その後廃線となったが、現在は糖鉄故事館にリノベされ、和洋折衷建築の美しさを眺めることが出来る。

正面左手の尖塔はビクトリア様式、外壁や右側の半切妻屋根は日式

その駅舎を背に歩き進めると、今でも街中がバナナ推しだ。

かつて「香蕉王國(バナナ王国)」と呼ばれていた台湾、中でも旗山産のバナナは輸出量などで突出していたため、旗山は別名「黃金蕉城(ゴールデンバナナシティ)」とも呼ばれていたそう。

なんだか香港映画にでも出てきそうだ。

香蕉冰淇淋(バナナアイス)や香蕉冰紅茶(バナナアイスが入ったアイスティー)があちこちで売られ、ひっきりなしに補充される香蕉蛋糕(バナナケーキ)は書籍等でも紹介されている。

抱き枕に良さそうなバナナのぬいぐるみも品揃え豊富。

宜芳魷魚意麵小吃

昼ごはんにと向かったお店は、ジェイミーが意麺についてコラムでも紹介している『宜芳魷魚意麵小吃』

世界に誇る日本のカップヌードルの原型となった台南の意麺(イーミェイン)との違いを直々に教えてもらいながら、醤油膏(とろみのついた甘い醤油ダレ)と生姜のタレにつけて食べるイカや、沙拉涼筍(たけのこサラダ。甘いマヨネーズで食べる)をお供に意麺を堪能した。

これらの台湾甘め調味料で思い出したのは、台中で生トマトをすり下ろし生姜と砂糖入りの醤油膏で食べたことと、台南で出会った甘いケチャップで作られる衝撃の美味さの蕃茄(トマト)炒飯だ。

日本と比べて甘みの強い調味料に、数日後のイベント準備で手こずることになるとは夢にも思わず、舌鼓を打っていたのであった。

このイカは魷魚、大量のわさび添え

常美冰店

今は鳥居と狛犬だけが残っているという日本統治時代に創建された旗山神社趾を横目に、次は旗山バナナアイスを食べようとジェイミーに連れて来てもらったのは『常美冰店』。

こちらの看板メニューである常美招牌冰は、香蕉清冰・紅豆(あずき)・芋頭(タロ芋)・果凍(フルーツゼリー)・仙草(ハーブの一種)・綜合冰淇淋(色々混ざったアイスクリーム)が全て入ったてんこ盛りの一品。

1番目の清冰を意訳するとバナナシャーベットが一番近いだろう。仙草はゼリーではなく粉粿(わらび餅のようなもの)に仕上げられており、食感もフレーバーも見た目も違う6つもの味わいが一度に味わえる美味しくて楽しいデザートだ。

それにしても台湾はフルーツや芋の使い方のアイデアが本当に豊かで、そこにそれぞれの地域性も加わるのだから、何度訪れても新たな発見がありとても面白いのである。

バナナと猿は切っても切れない間柄

客家の街・美濃へ

満腹のお腹を抱えお隣り美濃へ向かう道中、オバケの顔ハメのような物が道端に出現し始めた。

それは大根でした。

そう、美濃地区は大根(及びミニトマト。こちらも道路沿いにずらっとトマト売店が並んでいる)がたくさん作られていて、年に一度「美濃白玉蘿蔔季」すなわち大根祭りが開かれるほどだ。


政策によりタバコ葉栽培から大根(白玉蘿蔔)栽培への転作が図られたのだそう。

閑話休題、今回の美濃訪問では大根ではなく美味しいお米と紅豆を手に入れた。

お米は147號という美濃でしか作られていない単一品種で、炊くとほんのり芋頭の香りが漂い、冷めても柔らかいモチモチ食感が特徴。
実はこの「冷めても美味しい」というのが今回のイベントで提供するメニューのポイントになり得るので、実食が楽しみである。

ちなみに米が美味しいこの地区には、客家料理の一つで粄條(バンティアオ)という米から作られる麺があり、炒麺(やきそば)や汁麺(汁あり麵)といった調理法であちこちに看板が出ている。

さて美濃のもう一つの目的である紅豆に話を戻そう。

風が穏やかで秋冬の日照も充分な美濃平原では紅豆の生産も盛んで、『美濃區農會超市』でその名も「高雄9號」という減農薬の紅豆を買うことができた。

この農會超市という農協的なお店、各地にあって一般客も利用可能で、こちらの店舗では農産物以外の特産品や書籍もあったりと品揃え豊富。カフェも併設されており、とても見応えがあった。

お近くに行かれた際はドライブがてら是非立ち寄ってみてください!

ここまで、左営の伝統市場からスタートし街の商店街、漁港、郊外を巡り、イベントの食材が着々と揃ってきました。次のお話では食材を巡る旅の締めくくり、六亀紀行を記したいと思います。

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※1老街(ラオジエ)古い町並みの残った場所。観光地としてにぎわいのあるところも多い。

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【宜芳魷魚意麵小吃】
住所:高雄市旗山區中山路37號
定休日:月曜日
営業時間:9:30-19:00※googleによる。
※媒体によって21:30、22:00までという情報もあり。

【常美冰店】
住所:高雄市旗山區文中路99號
定休日:火曜日
営業時間:9:00-18:00(水曜・土曜は17:00まで)

【美濃區未來農會超市】
住所:高雄市美濃區雙峰街1-17號
定休日:なし※臨時休業、旧正月の時短などあり
営業時間:8:00-20:30

※営業時間は目安として参考としてください。お出かけ前にSNSなどでの情報チェックをおすすめします。

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hitsuji

那覇市の国際通り近くの路地の中にある古民家を使用したカフェ。 店主たちが訪れた国で味わった食事やスイーツ、ドリンクを提供しています。 その時々でメニューが変わるお店です。 旅に思いを馳せながらお過ごしください。

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