台湾に移住して、現地のディベロッパーに設計士として所属しつつ、台中にてアートギャラリーを運営している木村一心 (きむらいっしん) さん。
台湾各地で手掛けた物件と連携し、展示やイベントを開催される一方、設計だけでなく建築の運営にまで関わり、国際交流によるまちづくりに挑戦されています。
そんな木村さんの目を通して触れる、台湾の建築、アート、デザイン。第三回目は台湾の地域コミュニティについて。後編スタート。(前編)
商圏の結束を強くする
西区で最も人が集まる商業施設が勤美誠品緑園道です。
同じ誠品書店が入る百貨店でも台北や他の都市とは異なり、勤美グループ(鋳鉄、不動産業などを行う台湾の大手企業)が主体で運営する台中独自の動き方をしています。アーティストを起用した祭事や、街を巻き込むイベントなど、非常に文化的な取り組みをする百貨店です。
近年一番興味深かった取り組みは、西区で100店ほどの個人商店と連携したイベント※9を行ったことです。約100店舗、それぞれのオーナーをある種、キャラクターのように編集し、写真家とデザイナーを交え、1オーナー、1枚のカードを制作します。
そのカードの裏面には2ヶ月分の暦が記載されています。地域住民や観光客は自分の好きな店舗に行き、ある程度消費することでそのカードを入手することができます。
6枚集めると12ヶ月分となり、最後に勤美百貨店に持って行き、土台を受け取ることで、カレンダーが完成するという仕組みです。カード化された約100店は、基本的にSNS等で影響力を持つ若者の店がピックアップされていますが、伝統的なお菓子屋さんや、人気の老舗なども含まれています。
勤美グループのこのイベントは、同じ地域で商業活動するプレイヤーが一致団結し、その商圈を更に盛り上げていこうとする試みでした。その商圈のリーダーの役割を担う勤美の存在は、新しい百貨店のあり方だと感じています。
台湾のマーケット文化
街を盛り上げているのは、商店だけではありません。台湾にはマーケット文化が今、流行りを通り越し、とても成熟しています。
10年ほど前は、日本のフリマのような古い物を売るマーケットが主流でした。しかしここ数年は自分で創作したものを売るクリエイターマーケットがかなり増え、それぞれに特徴的な個性が現れ始めています。
日本のクリエイターマーケットと言えば、地方などで1年に1度、大規模に行われるイメージですが、台湾では、小規模なマーケットが街の至る所で同時に開催されているイメージです。
コロナ以前は、週末に街を歩きながら、いくつかのマーケットをはしごして楽しむという状況でした。駆け出しの若者や、副業で創作活動している夫婦など、店舗を持たずとも、地域住民がマーケットを通して、その街の商業活動に参加することができます。
台湾の街の魅力
まちづくりとは、住民、商店、百貨店、観光客などで構成された商業的地域コミュニティをつくりだし、強化することだと考えています。個人商店がたくさん存在する台湾の街がなぜ魅力的に見えるのか。
一人一人が消費者かつ創作者となり、積極的に街に関わっている様子が私たち日本人にとって新鮮なのかもしれません。そんな街の状況を参考に、時には建物を設計し、時には建物を運営しながら、地域のコミュニティに関わっていきたいです。
以上この度のコラムでは、地域コミュニティについて紹介させていただきました。
2021年6月現在、台湾ではコロナ患者が増加し、皆さん外出自粛の期間を過ごしています。街に人が少なくなる中、今後西区はどうなっていくのか、その辺のお話は、次回第4回、オンライン編に繋がっていきます。
台湾の最近のSNS事情や、ネットが街にどのような影響を与えているのかを解説していきたいと思っています。最後まで読んでいただきましてありがとうございました。
参考:
※9 2021街曆計畫 Street Hopping
https://greenripple.com.tw/store2calander/?fbclid=IwAR2BpzlkpdWmioTZcztq6r5FiwOhzR3cpQZmhCxdU8TEvHskafUQaxuW_Ic
※10 綠光小市
https://www.facebook.com/marketfantasystory
※11 my room market
https://www.instagram.com/myroommarket/
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