コラム

実践!木村一心の台湾でまちづくり。第2回歴史建築編(下)

台湾に移住して、現地のディベロッパーに設計士として所属しつつ、台中にてアートギャラリーを運営している木村一心 (きむらいっしん) さん。

台湾各地で手掛けた物件と連携し、展示やイベントを開催される一方、設計だけでなく建築の運営にまで関わり、国際交流によるまちづくりに挑戦されています。

そんな木村さんの目を通して触れる、台湾の建築、アート、デザイン。第二回目は台湾の歴史建築について。後編スタート。(前編

先駆けは、宮原眼科

中区で歴史建築の活用と言えば、宮原眼科*5です。宮原眼科は、日本時代に開院した眼科医院です。戦後、新政府に引き継がれた後、施設の移転を理由に1959年に民間に引き渡され、その後2010年まで放置されていました。

地震などの災害によって廃墟化していましたが、2012年から台湾の民間企業、日出グループが経営するお菓子屋さんとして生まれ変わり、現在台中を代表する観光スポットとして賑わっています。

実はこの物件の建設が決まる前、その価値を見出し、再活用の提案をした方がいました。その方は、東海大学建築学科教授の蘇睿弼さんといい、学生らと共に中区再生基地(中城再生文化協會)*6というチームをつくり、中区の街や建物をリサーチしています。

宮原眼科だけでなく、その他さまざまな廃墟、空き家が彼らによって調査され、行政と企業のマッチングを行い、歴史建築の再生を実現させています。

宮原眼科

宮原眼科

中区再生基地の学生たちが制作した歴史建築をマッピングした地図

中区再生基地の学生たちが制作した歴史建築をマッピングした地図

※5宮原眼科
https://www.miyahara.com.tw/mobile/en/index.php

※6 中城再生文化協會
https://www.facebook.com/GoodotVillage

 

最新の動き、臺灣府儒考棚

今一番ホットな事例は、臺灣府儒考棚*7という歴史建築のプロジェクトです。 1893年、日本時代よりもっと前、台湾の清朝時代に行政の資格試験会場として建てられた台中最古の歴史的建造物です。

この建物は市が所有し、改装自体は公共事業として行なわれました。そこから民間にバトンタッチされ、現在、デザイナーの郭中元さん率いる中島GLAbというチームが運営を担当しています。

グラフィックデザイナーをはじめ、写真家、イラストレーター、設計士、カフェオーナーなど、様々な分野のクリエイターでチームを構成し、歴史建築をプロデュースしていることがとても興味深いです。デザインやアートをテーマにした企画展を行うことで、若者が集まる拠点をつくっています。

 

臺灣府儒考棚/内観 (中島GLAb提供)

臺灣府儒考棚/内観 (中島GLAb提供)

※7 臺灣府儒考棚(中島GLAb)
https://www.facebook.com/graphicmatter/

 

失われる歴史建築

中区の開発は今後も進み、綺麗な街へと変化していくのかもしれません。ただ古い建物すべてが運よく再生されるとは限りません。

所有者が、建物の歴史的な価値よりその土地の商業的価値を重視する場合もあります。最近も日本時代に建てられた非常に歴史的価値のある天外天劇場*8という建物が惜しまれながら取り壊されました。新しくなった台中駅のすぐ側でした。

歴史建築の不審火騒ぎなども多々あります。写真の千越大楼*9という建物は階によって所有者が異なり、取り壊し派と、再生派に分かれ、廃墟状態がずっと続いています。

再生されるものもあれば、取り壊され、消えていく建物も存在し、街の様子は刻一刻と変わっていきます。入国制限がなくなり、観光ができるようになりましたら、ぜひその時にしか見ることのできない街の様子を観察してみてください。

千越大楼/外観

千越大楼/外観

※8 天外天劇場
https://zh.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%A9%E5%A4%96%E5%A4%A9%E5%8A%87%E5%A0%B4

※9 千越大楼
https://zh.wikipedia.org/wiki/%E5%8D%83%E8%B6%8A%E5%A4%A7%E6%A8%93

 

街をアーカイブ、発信する

今回事例としてあげた建物は数件ですが、中区には他にも興味深い物件がたくさんあります。

台中で書店(佔空間Artqpie)を営むデザイナーのAJさんは、国立台中科技大学の学生と協力して、中区をリサーチし、廃墟25件と、現在活用されている歴史建築25件、計50件の情報を1つの本にまとめました。

*10 台湾の若い人たちも街の現状をしっかり記録し、発信することで多くの人たちに知ってほしいと考えています。私も日本人として、台湾の都市が持つ文脈を、日本の皆さんと共有していきたいと思っています。

吉室中散策(佔空間Artqpie提供)

吉室中散策(佔空間Artqpie提供)

※10 吉室中散策(佔空間Artqpie)
http://artqpie.weebly.com/122982151323460200136529225955315741229925--25.html

以上この度のコラムでは、台湾の歴史建築について紹介させていただきました。

歴史的に価値のある建物が、都市の中にたくさん残っているという状況は台湾ならではだと感じます。この歴史建築を今後どう扱っていくかは、街を豊かしていくための重要なテーマだと認識し、これからの動きも注目していきたいです。

次回第3回は「地域コミュニティ」というテーマで書かせていただきます。まちを構成するのは、建物だけではありません。そこで生活している人に注目して、実際どのようなコミュニティができあがっているのかを解説していきたいと思っています。

最後まで読んでいただきましてありがとうございました。

前編はこちら

 

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木村 一心

木村一心 1988年茨城県生まれ。東京理科大学大学院 理工学研究科 建築学専攻卒。台湾に移住して、現地のディベロッパーに設計士として所属しつつ、アートギャラリーを運営する会社を経営しています。

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