東京・青山そして台湾・台北にてライヴハウス・月見ル君想フを運営し、日中台間のライヴの企画・サポートを行う傍ら、音楽レーベル『BIG ROMANTIC RECORDS』を運営し積極的にアジアの音楽・文化情報を発信する寺尾ブッタさん。
そんな寺尾さんが語る、台湾の音楽とと日本との交流。今日までの紆余曲折を大いに語っていただきます。
第2回目は聞いたことがあるけどよくわからない!?「レーベル」について。音楽のとらえかた、ちょっと目からうろこです。
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レーベルとはなんぞや
BIG ROMANTIC RECORDSというレーベルを日本と台湾で運営しはじめて、今年で早6年目になります。
そもそもレーベルってなにかというとですね。
なんらかの作品や商品を世に放つ時に、作品を創作したアーティストに代わり発信元や発売元となる組織・単位のことを指しております。
元々はレコードの真ん中にあるシール(ラベル)が発売元の情報を表していたところから始まったということですが、要は「CDとかレコードを作って出してるところ」です。
ではレコード会社との違いはなんなんだというと、ほとんど同じなのですが、一般的にレコード会社はもうちょっと大きい包括的な組織のイメージで、レコード会社の中にレーベルがいくつもある場合もあります。
その場合のレーベルは、作品を直に扱う「部門」のようなもので、やはり扱う作品によってレーベルの特色なども出てくるわけです。
レーベルをとおして音楽をみる
自分はいつからかこのレーベルという存在がとても気になるようになりました。
それこそ好きなバンドとかアーティストのレコードやCDを隅々までみてると、レーベルの名前が書いてあり、そのレーベルが出している他の作品をカタログ等でチェックしてみたり。
そうやって自分の知ってるバンド、音楽の種類がどんどん広がっていきました。
レーベル毎の特色なんてのも段々わかりだすと、好きなレーベルなんてのが出来たりして、そのレーベルが出す新人アーティストももちろんチェックしました。
そのうちに「意外なアーティストがあのレーベルと契約した!」みたいなゴシップめいた業界の話題も気になったり…。
途方もなく多く存在するアーティストと、その作品を把握して整理する上では本当に欠かせない情報の一つなのです。
台湾にかかわるようになった当時注目していたレーベルたち
ここでようやく本題に入りますが、私が7-8年くらい前に台湾の音楽にハマり始めた当初も、やはり私はシーン全体をまずレーベル毎に捉えて理解しようとしていました。
たとえるなら目次から全体を把握する、的な行為でしょうか。
当時聞いていたのは、台湾にはインディレーベルが数百もあって、あの小さな島にひしめき合っているということ。
単純にすごく多いなと思いましたし(後々、それは台湾人の持つ商売気質にも非常に関係があると悟るのですが)台湾音楽の多様性や層の厚さを証明しうる話だと思うのです。
まずはその数ある台湾のインディレーベルの中で、当時自分が注目していたお気に入りのレーベルを3つ、ご紹介します。
「KAO!INC」
まずは台湾のヒップホップの名門レーベル「KAO!INC」。
当時、はたから見てもすでに台湾音楽業界で勢いがあって、しかもヒップホップの枠だけに収まらない。
ギャングスターなヒップホップのイメージだけではないお洒落な雰囲気をかもしだしていました。
台湾のダンスミュージックとヒップホップを追っていくと、当時「KAO!INC」に所属していた蛋堡Soft Lipaに必ず行き着きました。
その後も今に至るまでLeo王、李英宏などのスターを輩出し続けている、ヒップホップのみならず台湾を代表する独立レーベルの一つと言えるでしょう。
「風和日麗」
そして、当時の台湾のアコースティックシーンを牽引していた「風和日麗」。
台湾では柔らかな中国語で歌うナチュラルな雰囲気のアーティストが盛り上がっていたのですが、そのほとんどはここのアーティストでした。
当時台湾で大流行した文創と呼ばれる新しい文系カルチャーとも非常に親和性も高かったと思います。
自分が良く聴いていたり関わりがあったのは熊寶貝、黃玠、何欣穗 ciacia、依錚依靜あたりでしょうか。
どれも素晴らしく雰囲気のあるアーティストばかり。
残念ながら2019年をもってレーベルショップがクローズ、以降活動も無いようです。
「角頭音楽」
3つ目は、原住民音楽、民族音楽を中心とした非常に台湾らしいユニークなラインナップで人気の「角頭音楽」。
インディレーベルと言っていいのかどうか迷うほど、レーベル作品の文化芸術的要素が強く、台湾現代音楽文化への貢献度が非常に高いレーベルです。
陳建年などの民族歌謡の巨匠はもちろんのこと、夾子電動大樂隊、濁水溪公社といった超個性派バンドの音源もリリースしているのもさすがというところ。
特色のあるフェスをいくつも主催したりと、台湾でのプレゼンスは今なお圧倒的です。
当時はこういったレーベルが台湾のインディーズシーンを盛り上げていました。(もちろん現在盛り上げているレーベルも含みます)
(後編へ続く)
後編は、台湾のレーベルが多い理由と特徴、そして「DIY」な取り組みをつづける寺尾さんおすすめのレーベルをご紹介!
2021年7月25日公開
2021年8月31日更新