コラム 日本で感じる台湾

柳沢小実の東京でみつける台湾。 Vol.04「also(鶯嶁莊/オルソー)」

エッセイストであり暮らしや旅にまつわる著書を多数執筆している柳沢小実さん。著書『わたしのすきな台北案内』を読んだことがある方も多いのでは?

台湾に温かなまなざしを向ける柳沢さんに、東京で楽しめるオススメの台湾のお店を紹介していただく連載コラム。

柳沢小実自己紹介写真

第4 回目は、also(鶯嶁莊/オルソー)さんをご紹介いただきます。レトロな雰囲気の元、ちょっとひねりのきいたおいしい台湾料理が楽しめる空間のようです。

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オルソー料理

東京は、外食が楽しい街です。素材へのこだわりや優れた調理技術、サービスの良さ、値段の安さなど、他の都市と比べても胸を張れるくらい素晴らしい。そして、その一端を担っているのが、日本人シェフによる中華・エスニック料理店です。

ここ数年の東京の中華・エスニック系繁盛店の傾向として、どれだけ混むようになっても同じ店を複数出さないということがあげられます。たとえば、「味坊」「味坊鉄鍋荘」「羊香味坊」「老酒舗」「香辣里」「吉味東京」を運営する味坊集団や、この連載でもご紹介した「東京豆漿生活」&「東京豆花工房」などは、料理の種類や業態をわずかにずらした店展開をしていて、それゆえにそれぞれ繰り返し訪れたくなります。

嬉しいことに台湾料理の店もだんだん増えてきて、台湾愛溢れる店もあれば、ビジネスという視点から研究を重ねた店もある。
個人的な体感としては、台湾ブームはすでに定着していて、お店側もお客さんもともに成熟期。さらに質の高い店が生まれています。

クラフトビールサーバー

「also鶯嶁莊(オルソー)」も、台湾のスパイス“馬告”を紹介したことで大人気となった、「フジコミュニケーション」の二店舗目。「フジコミュニケーション」は水餃子と台湾ストリートフード、ナチュラルワインがキーワードでしたが、「also鶯嶁莊」は水餃子とクラフトビールが売り。料理+お酒がいつもキーワードです。
新しいお店の共通点はSNSの発信に長けている点で、ここ「also鶯嶁莊」も主にインスタグラムで発信しています。インスタグラムは良いものやことをシェアしていくSNSだから、ポジティブな循環に身を置くことができると、オーナーの近藤さんが話してくださいました。

お店は一階と二階の2フロアで、約70席。台湾料理をベースに、ところどころ中華料理のエッセンスを取り入れたりと、自分たちらしくひねりを加えています。

私が一番好きなメニューは、水餃子のオリジナル味(豚肉と黄ニラ)。超粗挽きのバラ肉と肩ロース肉に、白菜と日本では高級食材である黄ニラを合わせています。
味つけは台湾醤油と塩、清湯と隠し味に昆布の粉末も入れているため、タレいらずで食べられます。ちなみに、ニンニクは台湾でも使っておらず、それにならって、こちらでも入れていないのだとか。

水餃子の皮は一枚ずつ手作り。日本ではもちもちツルツル系の生地が人気ですが、台湾の皮は歯切れがよく、いくつでも食べられる。だから、台湾に近いものにしたそう。皮には葱油を少し足して、風味良く。一日400個ほど包んでいます。

そして、珍しい骨付き肉の鶏肉飯(ジーローハン)は、台南で骨付きぶつ切り肉がのっている店があって、ぶつ切りもいいなとインスパイアされたもの。
鶏肉を生姜、ネギと一緒にゆっくり茹でて、鶏油と醤油、葱油を合わせたタレをかけています。食べ進めながら、まろやかでつーんとくる、手作りの潮州辣油もかけて味変させてもいい。
潮州の辣油は唐辛子の塩漬けを使っていて旨みと辛味のバランスが良く、他のお料理とも相性抜群です。

台湾ではおなじみの屋台料理、鹽酥雞(イェンスージー)は、さくっとクリスピーな鶏の唐揚げにバジルと鶏肉、細く切ったエリンギも添えた一品。
衣は一般的に用いられるタピオカ粉ではなく、水溶きコーンスターチとコーンフレークを使っています。そのため、よりざくっとした食感に。一口食べると五香粉とバジルの香りが広がって、台湾を思い出します。

お酒類は、台湾ビールをはじめ、台湾や日本のクラフトビールを扱っています。台北にビールレストランが10店舗ほどある有名クラフトビールメーカー“SUNMAI”の、桃と杏にピンクペッパーを足したビールが女性におすすめだそうです。

お店を始めるきっかけは、いつも建物との出会いから。店舗物件を探す際は、電柱が残っている下町っぽい雰囲気のエリアを中心に探すのだとか。
Y字路にたたずむこの建物を見たときも、台南の一軒家のようになるのではと直感がありました。鉄格子窓をつけて、“~荘”“~館”という名前にしたいとイメージが浮かんだそうです。

 

今後は、香港料理やベトナム料理、高級台湾料理の店の構想があるよう。外食が楽しい東京の街をさらに盛り上げてくれる一軒を、楽しみにしています。

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【店舗情報】

also(鶯嶁莊/オルソー)

住所:〒112-0001 東京都文京区白山5-32-13
営業時間:11:30~14:30/17:00~20:00
定休日:月曜日・火曜日
Instagram:https://www.instagram.com/____also___/

※営業時間、定休日については変更になる可能性もございます。店舗SNSなどをご確認の上お出かけください。

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柳沢 小実

エッセイスト 1975年東京生まれ、日大芸術学部写真学科卒。衣食住・収納・旅・台湾にまつわる著書は30冊以上。最新刊は読売新聞の連載をまとめた「おうち時間の作り方」(だいわ文庫)。「これからの暮らし計画」(大和書房)、「大人の旅じたく」文庫版も。 Instagram @tokyo_taipei

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