コラム 日本で感じる台湾

柳沢小実の東京でみつける台湾。 Vol.03「手作り台湾肉包 鹿港(ルーガン)」

エッセイストであり暮らしや旅にまつわる著書を多数執筆している柳沢小実さん。著書『わたしのすきな台北案内』を読んだことがある方も多いのでは?

台湾に温かなまなざしを向ける柳沢さんに、東京で楽しめるオススメの台湾のお店を紹介していただく連載コラム。

柳沢小実自己紹介写真

その第3回目となる鹿港はコツコツと長い間営業し地元の人にも愛される「肉包」のお店。

店主の小林さんのこだわりやおいしさの秘密など、柳沢さんがたっぷり聞いてきてくれました。

ーー

どこか懐かしいあの味をもとめて通うお店

鹿港外観

真っ赤な看板と、目をひく“肉包”(肉まん)の文字。
そして台湾好きにはおなじみの地名「鹿港」という店名。
外観からして気になりすぎるこのお店に、もう10年以上通っています。

「鹿港」の肉包は、朝食やおやつに毎日食べても飽きない味。
ほんのり甘い生地の香りをかぐと、なんだか懐かしく、子どもに戻ったような気持ちになります。

鹿港 蒸し器

オーナーの小林さんは、かつて日本語教師として台湾へ赴任していました。
そのとき、台湾中部の街・鹿港にある「阿振肉包 振味珍」に連れていってもらい、そこで食べた肉包の味が帰国後も忘れられなかった。
そして再渡航して二年間修業し、18年前に世田谷区上町(東急世田谷線上町駅から徒歩1分)に「鹿港」をオープンしました。

阿振肉包 振味珍3

阿振肉包 振味珍 外観

阿振肉包 振味珍2

阿振肉包 振味珍 店舗内

阿振肉包 振味珍

阿振肉包 振味珍 店舗内

修行した「阿振肉包 振味珍」のある鹿港は、古くに栄えた港町。
寺院が多く、そのため参拝土産を売るお菓子店さんも多くあったと聞きました。
今でも街並みや建物に昔の台湾の名残がある街です。

「阿振肉包 振味珍」も元々はお菓子店で、国内外から事業拡張の誘いや弟子入りの依頼が絶えなかったのだとか。
数多くのオファーを断っていましたが、その店のオーナーもかつて日本で修行経験があったというご縁で、日本人の小林さんを受け入れることにしたそうです。

店主小林さんの肉包にかけるこだわり

鹿港 肉包

台湾には「〇〇を食べるならばこの店で」と信頼されている専門店が多くありますが、日本ではメニュー数をぐっと絞り込んだ専門店はまだほんのわずか。
数少ないメニュー数で勝負できるのは、そのひとつひとつが他にはない魅力を放っているからなのです。

鹿港 厨房

店内をひょいっとのぞくといつも、スタッフ総動員でせっせと肉まんを手作りしています。
特筆すべき点は、脂身の加減がちょうどいい肉餡と、滑らかでもっちりとした生地。

肉餡は国産豚肉を粗く挽いて、油で揚げた台湾のエシャロットを混ぜて生のまま包んでいるので、ジューシーな肉汁を閉じ込めることができる。
味つけは、肉本来の味が引き立つよう薄味に。
塩胡椒を控えめにして、豚の脂身も日本人の味覚に合うよう減らしています。もちろん保存料などは入れていません。

生地伸ばし

生地伸ばし2

生地は二時間発酵させて、圧麺機にかけています。
圧麺機とは、麺類や包子の生地づくりの際に、生地をのす機械のこと。
生地を少量ずつとって何度も繰り返し圧麺機に通すと、黄色みがかった生地が、次第に白く、つやのある生地に変化していく。

実はこの工程が大きなポイントですが、とても手間がかかるため、どこの店でもやっていることではありません。

餡詰め中
肉包み中
肉包成形

そのような工程を経て出来上がったきめ細かくもっちりコシのある生地で、職人さんが物凄いスピードで肉餡を包んでいく。

美味しくならないわけはないのです。

 

定番もオリジナルメニューもたっぷりの幸福感とともに

鹿港メニュー

「鹿港」の開店当時のメニューは、肉まん、あんまん、まん頭(肉包の生地を蒸しあげたもの)の三種でした。
今はそれらに加えて、黒糖まん頭と辛口肉まん、若き店主の辻さんが考案したカレーまんもあります。

ドリンク

そして、ドリンクもお忘れなく。
北海道産の大豆と水だけで丁寧につくった自家製豆乳(加糖、ほのかに甘い無糖、香ばしい黒ゴマの三種類)と、ジャスミンティーをブレンドしてレモンを添えたさっぱり味の冬瓜茶もあります。

 

肉まん

レトロな路面電車が走る世田谷区上町にお店を構えたのは、下町っぽいところが気に入って。
自転車で移動する人も多いエリアなため、ここがいいと思ったのだとか。
お店が面している世田谷通りを走るバスからお店を見て、気になって来店するお客様も多いそうです。

肉まんの専門店をやろうと思い立った理由は、新しいものよりも、日本にも元々あってなじみのあるものを台湾から持ってくるのがいいなと思ったから。
肉まん作りは、他の人はここまではやらないくらい、手間をかけてやっている。
そういう芯があるから、変なことさえしなければつぶれないという自負があります。

蒸し上げちゅう

これまでは一日あたり1200個、コロナ中でお客さんが減っても800個の肉まんを毎日売り上げています。

たしかに、いつ通りかかっても店の前には行列が。

当初から、店は一店舗のみで増やさないという約束だったため、この先も実店舗はここ一軒のみ。
その代わり、今後は通販や催事などで鹿港の味を広げていきたいそうです。

お家で鹿港

お家で鹿港2

冷蔵冷凍した肉まんも、フライパンや蒸籠で加熱すると、作りたてのふんわりやわやわな食感に。
アツアツの肉まんに、はむっと噛りつく瞬間の幸福感。ぜひ通販でもお楽しみくださいね。

ーー

【店舗情報】

手作り台湾肉包 鹿港(ルーガン)

住所:〒154-0017 東京都世田谷区世田谷3丁目1-12
営業時間:9:00〜(売り切れ次第終了)
定休日:木曜日・第2・4水曜(※7月8月は水木休)

公式サイト https://www.lu-gang.net/

オンラインショップ 手作り台湾肉包 鹿港

Instagram:@lu_gang_nikuman

※営業時間、定休日については変更になる可能性もございます。店舗SNSなどをご確認の上お出かけください。

~Akushuの記事更新情報はInstagramをチェックするのが便利!~

@akushu.tawian.mag

スポンサーリンク

  • この記事を書いた人
  • 最新記事

柳沢 小実

エッセイスト 1975年東京生まれ、日大芸術学部写真学科卒。衣食住・収納・旅・台湾にまつわる著書は30冊以上。最新刊は読売新聞の連載をまとめた「おうち時間の作り方」(だいわ文庫)。「これからの暮らし計画」(大和書房)、「大人の旅じたく」文庫版も。 Instagram @tokyo_taipei

Copyright© Akushu ㅣ台湾とつなぐ・つながるWEBマガジン , 2024 All Rights Reserved.