コラム

実践!木村一心の台湾でまちづくり。第5回 アート編(後編)

台湾に移住して、現地のディベロッパーに設計士として所属しつつ、台中にてアートギャラリーを運営している木村一心 (きむらいっしん) さん。台湾各地で手掛けた物件と連携し、展示やイベントを開催される一方、設計だけでなく建築の運営にまで関わり、国際交流によるまちづくりに挑戦されています。

そんな木村さんの目を通して触れる、台湾の建築、アート、デザイン。第5回目は台湾の人々と街とアートの関わりについてご紹介します。

後編は、木村さんがディベロッパー(不動産の開発・企画実行・分譲/貸出・運営など行う)に所属しながらギャラリーの運営を行っているわけについて。

ギャラリーをつくる

私は設計士として台湾に来て、古い建物をリノベーションし、再生するという仕事をしております。
コラム第1回リノベーション編や、第3回地域コミュニティ編でも詳しく紹介した、范特喜微創文化というディベロッパーに所属しており、廃墟や空家物件を管理しています。

ある時、会社の社長がそんな空き物件の一つを、自由に使っていいと私に言ってくれました。その空間は、コラムでも何度か紹介した綠光計畫という商業施設の先頭に位置します。

そんな建築の顔となる重要な場所に、私はアートギャラリー綠光+marüte*1を設立しました。

綠光+marüte外観

綠光+marüte外観 (2017年 平野甲賀 台湾展)

最初は、DIYで改装を行い、自分の学生の時代の作品や友人の作品を紹介するところから開始しましたが、次第に興味を持ってくれる日本の作家さんやギャラリーさんが現れ、2015年に日本人作家を紹介するギャラリーとして正式に運営を始めました。

運営をしていく中で、台湾の皆さんの芸術に対する情熱や、アートが街を動かす状況を目の当たりにしました。
建物を設計するだけでなく、ギャラリーを通して建物を運営し、建築が街と結びつく様子を見たいと、現在も試行錯誤しながら兼業しています。

綠光+marüte 2020年展示風景

百貨店でインスタレーション

ギャラリーを運営して、初めて街とつながる感覚を得られたのが、百貨店さんとコラボをしたときです。

これまでのコラムでも度々紹介した台中の百貨店、勤美誠品綠園道さんでは、屋外の公共空間にパブリックアートを意識したインスタレーション(空間を作品として体験してもらうアート)を季節ごとに設置します。
巨大アートと関連装飾によって、百貨店全体をアート空間にしようという試みが、何年も継続して行われています。

私もアートが街に与える影響や反応を知りたくて、自身のギャラリーで紹介している作家のインスタレーションを日々提案しています。
その中で実現したプロジェクトを紹介します。

勤美誠品綠園道さんの屋外スペース・向かいは大きな公園

この時設置されたのは、美術家 飯川雄大さん*2の「デコレータークラブ−ピンクの猫の小林さん−」という高さ4メートルの作品。
大勢の人が行き交う百貨店のメインエントランスに設置しました。

台湾の人々は、街中に突如現れた巨大な蛍光ピンクの猫に対して、その可愛さから思わず写真を撮り、SNSでシェアをしようと考えます。
しかしこの猫の小林さんは小判や草に隠れていて、どこから撮影しても全貌を収めることができません。蛍光色で発光した体もカメラではピントが合わず、実際に目で見た様子と、画面上では色が異なります。

SNS好きで、可愛いもの好きの台湾の皆さんにどう感じてもらえたのか。
場所を賑やかにしたい百貨店と、街を使って表現をしたい作家との素晴らしいコラボレーションでした。

勤美誠品綠園道で設置された美術家 飯川雄大の「デコレータークラブ−ピンクの猫の小林さん−」と撮影を試みる観覧者

海外で暮らしていると、日本は本当に様々なコンテンツに恵まれていると感じます。

アートに関しても、素晴らしい作家がたくさん存在し、街は面白い展示会であふれています。
日本にいるとそれが日常だと錯覚してしまいますが、海外からみるととても新鮮で刺激的です。

SNSの発達で、簡単に展示会や作品の情報を入手できるようになったことで、アジアを中心に日本人作家への注目が集まっています。
海外アーティストの展示会やイベントはとても歓迎され、街が賑わいます。

現在コロナ禍で、実際の行き来は難しくなっていますが、今後もアーティスト活動と台湾の街、そんな両者の需要を把握し、市場のやりとりだけでなく、お互いが楽しく豊になるように繋げていきたいと思っています。

木彫作家 ムラバヤシケンジのインスタレーション

勤美誠品綠園道で設置された木彫作家 ムラバヤシケンジのインスタレーション*3

以上この度のコラムでは、”台湾の街とアート”というテーマで書かせていただきました。
最終回となる次回第6回は、地方創生編というタイトルで書かせていただきます。
これまでのお話は、市街地をピックアップしたものがほとんどでしたが、次回は台湾の地方都市で行った取り組みについて紹介したいと考えています。

最後まで読んでいただきましてありがとうございました。

参考:

※1 綠光+marüte
https://www.isshin-taiwan.com/gallery

※2 美術家 飯川雄大 WEBページ
https://takehiroiikawa.tumblr.com/

※3 木彫作家 ムラバヤシケンジ WEBページ
https://webmorrison.com/

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木村 一心

木村一心 1988年茨城県生まれ。東京理科大学大学院 理工学研究科 建築学専攻卒。台湾に移住して、現地のディベロッパーに設計士として所属しつつ、アートギャラリーを運営する会社を経営しています。

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