月餅の季節
少し時期は過ぎてしまいましたが、今年、2020年は10月1日が中秋節でした。
日本では月見団子が名月のお伴ですが、中華圏だと月餅が定番です。
なんてったって月の餅です。
(餅は伸びる餅ではなくて、煎餅の餅だと思ってください。どちらかというとペタンとした、塊状の食べ物というイメージ)
はなうた食堂では、毎月、時光舎さん(大阪池田の中国料理と台湾茶のお店。台湾の茶藝館みたいな素敵な空間です)と一緒にお菓子セットの発送をしているのですが、10月、今回はもちろん月餅。
時光舎さんとはなうた食堂で4種類の月餅詰め合わせを作りました。
「月餅」とひとことで言っても、中華圏全体で親しまれているそれは、地域によってスタイルも様々。
日本の人が、月餅と聞いて一般的に思い浮かべる、模様のついた茶色くて艶のあるものは、「広東式」と呼ばれるものです。
また、その大きさも実はいろいろ。
日本でよく見かけるものは小さめサイズで、現地では、大きいものをケーキのようにカットして、皆でいただくというのが、定番スタイルのようです。
今回は、その広東式を時光舎さんが、はなうた食堂調理室は台湾で親しまれているタイプを中心に3種類作りました。
それでは、はなうた食堂が作った台湾で定番の月餅たちをご紹介。
定番の綠豆椪
その1。台湾の月餅のド定番。緑豆餡の入った、白い生地の月餅。
綠豆椪(ludou peng/ リィウドォポン)と呼ばれているものです。
緑豆の丸く膨らんだの、という感じの名前。
月餅という名前がついていない…。
そう!月餅というのは、中秋節の時期こそ行事ものとして出回りますが、それ以外の時期でも販売されていて、通年親しまれるお菓子としての側面と、中秋節のお菓子としての側面とを合わせ持っているものでもあるのです。
綠豆椪の白い生地は、パイ状になっていて、食べるとホロホロと崩れます。
台湾人はホロホロ崩れるお菓子が好きですね。机の上に、受け皿なりを準備していただきましょう。
緑豆餡はごくごくシンプル。日本の餡と同じように、豆を炊いて潰して、砂糖と一緒に練りながら煮詰めますが、油が入るところが、日本との違いでしょうか。
でもとてもあっさりしています。
癖もないので、日本人にも受け入れられやすいのではないかしら。
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その2。台式月餅(taishi yuebing/タイシー ユエビン)。
見た目は広東式と似てますね。
ただ、生地の作り方が全然ちがっていて、広東式がシロップで粉を練り上げるのに対して、台湾式のこれは、水あめや卵が入る、洋菓子みたいな作り方をします。
台湾の「製菓技能テスト」の基準に準ずると、餡の量は広東式より少なめです。(あくまで技能テストの話です。実際は各店が工夫をしていろいろな比率のものがあると思います)
定番の小豆餡もありますが、はなうた食堂調理室では今回はココナッツ餡にしました。
中華文化の深さを感じる 蘇式鹽椒月餅
その3。
蘇式鹽椒月餅(sushi yanjiao yuebing/スーシ イェンジャオ ユエビン)。
その名のとおり蘇州あたりの月餅です。中は黒胡麻ベースで、塩(鹽)と花椒(ファージャオ)がはいるのが特徴です。
とはいえ、しょっぱくも辛くもなくて、花椒の華やかな香りが美味しい、甘い餡。
生地は、こちらもパイ生地ですが、材料の比率がその①の緑豆の月餅とはまた違って、こちらのほうがリッチな味わい(つまり油が多い)です。
蘇式の月餅では、この中に肉餡が入るものも定番です。
月餅に思う
月餅といえばとにかく甘いものという印象がありますが、食事になりそうなもの、甘い餡に肉が入っているもの、様々なバリエーションがあります。
今回時光舎さんが作った、広東式月餅も、餡は小豆の甘いもので、その中に塩漬けにした卵黄が入っていました。
私も出会った当初は驚きましたが、今は大好きな組み合わせです。
塩スイーツの先駆けかしら。
中華圏は広い。月餅一つとっても本当にいろいろです。そして、台湾には、歴史的に中華圏各地の人が多く集まっています。
そのルーツと、時間の流れと、台湾という土地独特のものが合わさって生まれる「台湾味道(台湾の味わい)」。
文化のグラデーションを全身で感じられる美麗島の魅力を、食を通して楽しみ、考え、同じアジアの仲間として大切にしていけたらと願っています。
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普段、食べる専門なので興味深いです。そしてココナッツ餡、食べたことないかも。食べたーい!
中華菓子めぐりな台湾も素敵かもしれません。
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