エッセイストであり暮らしや旅にまつわる著書を多数執筆している柳沢小実さん。著書『わたしのすきな台北案内』を読んだことがある方も多いのでは?
台湾に温かなまなざしを向ける柳沢さんに、東京で楽しめるオススメの台湾のお店を紹介していただく連載コラム。
第5回目は、帆帆魯肉飯さんをご紹介いただきます。
台湾人のソウルフードともいうべき魯肉飯に情熱を注ぎ作り続ける店主・唐澤さんのこだわりを余すところなく伝えていただきます。
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「台湾が好き」
その気持ち、とてもよくわかります。なぜなら私もそうだから。
「できれば台湾に住みたい」
同じく。ここ10年ほど、年に数回はどうしたら台湾で暮らせるか本気で考えています。
東京・三軒茶屋で「帆帆魯肉飯」を営む唐澤さんも、そのように考える一人でした。
台湾が好きで、台湾に住みたい。でも現実は、家族もいてかなわない。
そこで「日本で、台湾の人みたいに暮らそう」と決めました。
「帆帆魯肉飯」がオープンしたのは、コロナ禍真っただ中の2020年11月。
自分が立てる店しかやりたくないと、台湾の音楽と食べもの、好きなものだけを集めた空間に。
お店を始める前は怖くて仕方なかったけど、魯肉飯はどれだけ作っても作り飽きない。
始めてみたらノーストレスで、どうやら向いているのかもと思ったそうです。
魯肉飯はくず肉や少しのお肉を細かく刻んで、スパイスや漢方をたくさん入れて煮込み、ごはんにかけて食べる台湾のソウルフード※1。
たとえば家庭では電鍋で作っておいて、みながおやつに食べたりします。
かつての台湾は貧しかったため、少しの肉で白米をたっぷり食べられるメニューは庶民の味方だった。
多くの人に愛されて、もちろん今でも。人気店にはひっきりなしに人が訪れています。
最初は台北にある魯肉飯の有名店「金峰魯肉飯」になりたくて、あのお店がやっていると聞いたことは、すべて試したそうです。
そのうちに台湾南部の味のほうが好きになり、今いちばん好きな魯肉飯は、高雄の自強夜市にある「南豊魯肉飯」。
甘みがあるけど甘すぎず、甘みとしょっぱさのバランスがいいのだとか。
「帆帆魯肉飯」では肉の部位によって切る大きさを変えていて、赤身に対して脂身を大きめにして肉の存在感を出しています。
味つけは日本向けにアレンジはせず、唐澤さんが美味しいと思う味を追求していますが、台湾の人には繊細な味だと言われるそう。
日本人らしい細やかさや丁寧さを掛け合わせた、ハイブリッドな魯肉飯。
個人的にも、これまで食べた魯肉飯の中でもダントツだと思っています。
店舗のデザインは、台湾を好きになって初めて友達になった、花蓮出身のデザイナーが担当。
彼は日本に建築デザインの勉強に来ていた留学生で、台湾のバンド・マニックシープの来日ライブがきっかけで知り合いました。
デザイナーの実家そばの古民家を改装した店がモデルで、ツートンの壁やタイルの床、壁の柄や鉄窓花など、台湾の伝統的なディティールを現代的にアレンジしています。
このようなチャーミングで小さいお店の強みは、料理はもちろんのこと、店主のファンがたくさんいることです。
「魯肉飯が美味しいだけじゃダメ」。
唐澤さんは、かつてバンドのスタッフをしていた経験から、告知の仕方を覚えました。
“ニュースを作っていけば、人が来る”と教えられて、SNSでも人柄が伝わるように心がけているそうです。
そのような細やかさが、料理だけが目的ではない、空気感や価値観を共有するよろこびにつながるのでしょう。
趣味が近い友達の家に遊びにいったような感覚にも似ています。
自由な発想と軽やかな行動力で、自分らしい働き方や生き方を。
「街のおばあちゃんの魯肉飯屋になりたい」という夢は、始まったばかりです。
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※1台湾北部では魯肉飯といえば細かい肉を使っていることが主流。
南部では角煮状の肉をのせたものを魯肉飯と呼ぶことも多い。
【店舗情報】
帆帆魯肉飯
住所:東京都世田谷区三軒茶屋1丁目5-17
(三軒茶屋駅南口より徒歩7分)
営業時間:【平日】12:00~15:00/17:00~20:00
【土日】12:00~19:00
※ラストオーダーは閉店30分前まで
※売り切れ次第終了
定休日:月曜日・水曜日
営業時間や営業日は変更になることもございます。
売り切れ情報と合わせて店舗SNSでご確認の上お出かけ下さい。
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