こんにちは、木村一心と申します。台湾に7年住み、まちづくりに携わる仕事をしています。リノベーション、歴史建築、地方創生などをテーマに、自身の体験を踏まえながら、台湾のまちづくりについて紹介していきたいと思います。
第1回リノベーション編、第2回歴史建築編、第3回地域コミュニティ編、第4回オンライン編と、台湾には魅力的な場所やコミュニティがたくさん存在し、多くの人々が街と深く関わりながら暮らしている様子を紹介させていただきました。
今回第5回では、アート編というタイトルで、台湾の街とアートについて紹介していきたいと思います。宜しくお願いします。
台湾のアート市場
アートに関心がある人ならきっと知らない人はいない、そんな世界最大級の現代アートフェア Art Basel *1の開催など、香港を中心にアジアのアート市場が勢いを増しています。
台湾でも、台北國際藝術博覽會(ART TAIPEI) *2が、台湾を代表するアートフェアとして市場を拡大させてきました。
近年は、より国際色の強い台北當代(TAIPEI DANGDAI)*3や、ONE ART TAIPEI*4など新たなアートフェアが設立され、さらに台北だけでなく、台中、台南、高雄など台湾の各都市にも広がりをみせています。
フェアでは海外の有名ギャラリーが顔を揃え、台湾のアート市場が現在世界で注目されていることがわかります。
奈良美智展の盛り上がり
台湾はプライマリー(ギャラリー等での販売)や、セカンダリー(オークション等での売買)などのアート業界だけが成熟しているわけではありません。
台湾に7年も暮らしていると、アートに関心がある人の比率がかなり高いことを実感します。
先日2021年3月に奈良美智さんの台湾個展*5が台北にて開催されました。
反響はものすごく、開催から二ヶ月経過しても、毎日午前中には当日の入場券がなくなってしまうほど人気でした。残念ながら新型コロナの影響で、途中から開催を断念することになってしまいましたが、展示会の需要は台北だけにとどまらず、今後、台南、高雄と巡回展が企画されています。
台湾の友人に、台湾の人はどうして奈良美智さんが好きなのかと質問してみました。
その友人の場合は、小さい頃に作家のドキュメンタリー映画や作品集に触れる機会があり、作家の活動を追うようになったそうです。
今回、台北芸術大学關渡美術館で開かれた奈良美智展の入場料は無料でした。台湾では、国立美術館が入場無料で、各都市にある市立美術館なども数百円で入場できます。
奈良美智さんの絵が台湾の人に愛されているというのはもちろんありますが、若者や子どもたちが気軽に美術館に足を運ぶことができる環境が、アートへの距離を近づけているように感じます。
台湾とパブリックアート
台湾の人々がアートに親しみを持つ理由は、街の中にもあります。
台湾には、文化藝術獎助及促進条約*6という法律があり、その中に「公共建築の建設または大規模な公共工事を行う機関は、環境の美化のためにパブックアートを設置する義務がある。またその費用は、その公共建築または公共工事の総工費の1/100を下回ってはならない。パブックアートの設置は、芸術家の提案を参照し、維持管理計画書を作成のもと、毎年の定期点検、予算投入を行う(一部抜粋)」と記載されています。
台湾の駅や公園で度々パブリックアートを見かけるのは、このような1% for art 呼ばれる制度を導入しているからです。
政府はコンペティション*7などを通して作家に制作の機会を与え、街の景観をつくっています。
参考:
※1 Art Basel in Hong Kong
https://www.artbasel.com/hong-kong
※2 台北國際藝術博覽會(ART TAIPEI)
https://art-taipei.com/
※3 台北當代(TAIPEI DANGDAI)
https://taipeidangdai.com/
※4 ONE ART TAIPEI
https://www.onearttaipei.com/
※5 奈良美智特展
https://www.facebook.com/YOSHITOMONARAinTW
※6文化藝術獎助及促進条約
https://law.moj.gov.tw/LawClass/LawAll.aspx?pcode=H0170006
※7パブリックアートのコンペ概要が記載されているサイト
https://publicart.moc.gov.tw/
※8 アーティストBaNAna Linさん
https://www.facebook.com/bananalin2006