台湾に移住して、現地のディベロッパーに設計士として所属しつつ、 台中にてアートギャラリーも運営している木村一心 (きむらいっしん) さん。
一心さんの視点で高雄·左營のまちづくりについて3回にわたって紹介する今回のコラム。
第2回目となる「建業新村の再生計画」も前回と同じく大変興味深い内容です。
後編は高雄政府が建業新村の第2期入居者を「民宿業者」に絞った理由や入居者たちの思いなどシェアしてくださっています。
前編はこちら
民宿事業者を募集する
江舟航(ジェイミー・ジャン)さんと左營を見てまわったその日の夜は、建業新村の中にある破豆基地(ポートウジーディ)※5で宿泊させてもらいました。
破豆基地は建築学科を卒業した若い2人(佳鈴さんと安柏さん)が経営している民宿です。
彼女たちは借りた日本建築は、室内で空間を二つに分け、半分は自分たちが生活する空間、もう一つを宿として一般に貸し出されています。
彼女たちも隣に住んでいるので、夜遅くまでこの建物の運営方法や、建業新村の歴史について教えてくれました。
第1期で、芸術家や建築業者によって街の骨格が整えられ、世間に認知はされ始めましたが、まだまだ人がたくさん集まる場所にはなりません。
そこで第二弾の入居募集を民宿業者に限定し、観光客には宿泊するという目的を与え、建業新村に生活空間を作り出す試みが開始されました。
元々民宿を経営していた事業者が入居するという形ではなく、民宿を始めてみたい若者や、ジェイミーさんのように自分の本業と民宿を結びつけ新しい形の宿を提案したい方が選抜されています。
佳鈴さんに話を聞くと、第一段の時よりは、家賃は少し上がったそうですが、まだまだ安い値段で借りることができているそうです。
第2期の入居者も入居の期間は5年間と契約で定められています。
この期間中に、美しい建築を最大限に利用し、民宿業者としての経験とブランド力を身につけ、撤退後は別の場所で独立することを意識して運営をしているそうです。
軍旅舍goonnight hostel
破豆基地さんの他にも、建業新村にはたくさんの民宿があります。それぞれオーナーさんの個性が反映し、日本建築の中に様々な宿泊空間が展開されています。
軍旅舍goonnight hostel※6は、インテリアデザイン会社が運営する民宿です。寝具や家具は、この建築空間に合わせ、自社のインテリアデザイン部で設計をしているため、とても居心地がいいです。
また建設当時から残る梁や柱、壁などを強調した空間づくりがなされ、歴史を感じる仕掛けがたくさん施されています。
個人的に面白かったのは、室内を移動するときに感じる床や天井の高さのずれや、開口の位置、レンガの積み方など、建物に様々な違和感があることです。
建物は日本人によって建設されましたが、戦後日本人が撤退した後は、国民党海軍によって引き継がれました。
世帯が増えるごとに、レンガとモルタルで増築がなされ、建物が拡張していった背景があり、室内に外壁が出現したりと、また別の歴史を感じることができます。
もしこの民宿に宿泊して、そんな歴史の境界を知りたければ、店主の阿傑さんに尋ねてみてください。
日本の皆さんに伝えたい
民宿業者を受け入れた後、第3期の募集はどうなるのか。まだもう少し先のことなので、詳しい募集内容はまだわからないようですが、業種の制限はなくなるそうです。
民宿を設け、ある程度の認知と親しみをもってもらった後に、商店の力でこの場所に新しい活力を与える試み。
若者たちによる創作活動や商業活動によって、市街地から少し離れたこの歴史地区が活気ある豊かな場所に変わっていく、そんな姿を見るのがとても楽しみです。
2020年にコロナがやってきて、建業新村の民宿事業者は、プラン通りの運営はできていないそうです。
今後文化局の方針がどうなるかまだわからないそうですが、今後も彼らが臨機応変に対応しながら、次のステップに進んで行く様子を追って行きたいと思っています。
破豆基地のオーナーさんは、今回日本の皆さんにこの場所の歴史や未来の計画を伝えることができて嬉しいとおっしゃっていました。
日本とも深く関わる場所なので、ぜひ日本のたくさんの人に知ってほしいと思っています。
以上、今回のコラムでは、建業新村の歴史や今後の開発計画について紹介させていただきました。
次回のコラムでは、たくさんの美しい日本木造家屋が残された住宅区、煉油廠宿舍群(石油工場宿舎群)を中心に歴史建築やまちづくりについて紹介させていただきたいと考えております。
更にディープな左營の一面を伝えられればと思い、日本と高雄の関係を深堀りしていくつもりです。宜しくお願いします。
註
※5 破豆基地
https://www.facebook.com/Pho3Tau7Hostel/
※6 軍旅舍goonnight hostel