2024年1月、高雄の料理人・パティシェである江舟航(ジェイミー・ジャン)氏が「日本料理人舊城飲食工作坊」というイベントを開催しました。
ジェイミーの住む高雄・左営に日本から料理人を招き左営を中心に高雄各地を巡りその食文化や食材の特徴を知る。
各地を巡りながら食材を集め、集めた食材と高雄でのインスピレーションを元に日本の料理人が高雄の人々に料理をふるまう。
さらに料理や⾷材の特⾊、左営との共通点や違いについてジェイミーと日本の料理人とでトークショーを行う。
上記3つの柱をテーマに開催されたイベントについて、ジェイミーから招へいを受けた穭(ヒツジ)さんに期間中の様子をまとめてもらうことにしました。
台湾にも詳しい穭さんの綴るイベント旅記録。
丁寧に丁寧に綴ってくださっています。2日目は朝ごはんからスタート。
高雄の食文化に触れる旅2日目
果貿社區と朝食店へ
1月だというのに力強い朝の日差しの中、まるで香港の団地にいるような錯覚を覚える果貿社區(グォバオシャーチュー)。
ここはかつて南部最大の眷村であったが、老朽化が進み1980年代に新しく現在の団地群が建設され、古い家屋住まいだった人々が移り住んで形成された。
朝からひときわ賑わっていたのが1988年創業の『寛來順早餐店』で、こちらでは豆漿(豆乳)や韮菜包(ニラまん)などを頂いた。
調べるとどうやら、朝に豆漿を飲むという外省人が持ち込んだ習慣が、チェーン店の展開などにより台湾全土に広く根付いたのだそう。
紅茶や咖啡(中国語圏におけるコーヒーの漢字表記は口へん)などのバリエーションがある甜豆漿(甘い系)、スープのような食事系の鹹豆漿(しょっぱい系)など、どの店でも色々楽しめる。
私たちの隣席には、おそらく団地内に住んでいるであろう女性が頭にカーラーをグルグル巻きつけたまま朝ごはんを食べに降りて来ていたりと、飾らない日常が垣間見えた。
団地の一階部分や周辺の果峰街一帯にかけて所狭しと広がる店舗や市場は、肉や魚、野菜、果物、おかず、お菓子、調味料などが雑多に溢れ、さながら団地の台所といった風情だ。
瞬く間に売り切れる豆腐屋もあるのだとジェイミー談。
この市場では、イベントで使う重要な食材を調達した。
現磨芝麻粉養生極品、日本語にすると「擦りたてのゴマ」だ。
店先には新鮮なゴマを搾る昔ながらの機械が現役で活躍していて、搾りたての芝麻醤(胡麻ペースト)を買うことも出来る。
また、老舗の『嚴記燒餠舗』(焼餅がとても美味しかった!)でもご厚意で黒ごまを分けていただいたりと、ジェイミーが足繁く通っているからこそ生まれる市場ならではのやり取りに感謝である。
哈囉市場で食材を探す
続いて訪れた近くの『哈囉市場』は商売人も多く利用している様子で、日本人に馴染みのある食材も揃っている。
探していた豆腐や炸豆腐(厚揚げ)は自分で好きなだけ計量して買うスタイル。
沖縄の市場でも恒例のもやしヒゲ取りは簡素だが機械化されていた。
市場内の魚屋へ行けば鮮魚はもちろん、火鍋で人気の具材の各種”漿”(ペースト状に加工された、いわゆるすり身)や漢字が怪しい鳴門巻き、便利な冷凍切り身まで売っている。
話が少々逸脱するが、海鮮と言えば、台湾で毎回混乱を極めるのがイカだ。昨夜の酸菜白肉鍋屋さんのメニューにも現れたのだが、
花枝、魷魚、墨魚、烏賊、鎖管、小巻、中巻、透抽、槍烏賊、軟絲、、、、、
これらは全てなにがしかのイカの種類または呼び名である。
花枝はつみれやすり身、少巻は米粉湯(ビーフンスープ)で見かけることが多い(たまに小巻丸ごと炒飯という変化球もある)。
違いに関し詳しい説明は難し過ぎるので割愛するが、もしお店に入ってイカ系メニューで迷った際には、このイカたちのことを心の片隅に思い出して検索の一助になれば幸いである。
北へ、蚵仔寮漁港
さてここから北へ向かい、途中、西陵街というかつて軍兵士で賑わっていたエリア(実際に今でも現役の軍用品店があり、沖縄のコザのような雰囲気)に立ち寄りながら、梓官区は蚵仔寮(クゥズリャオ)漁港という所へやって来た。
ここは伝統的な漁村から観光漁港も兼ねた魚市場になった場所で、買った海鮮を調理してもらって食べる代客料理店という店も数軒ある。
美しい夕日が望め、「魅力ある十大漁港」に選ばれたほど。しかも魚市の品揃えは圧巻で、黒潮の豊かな恵みが溢れかえっていた。
こちらでは、アジを購入。
後に、このアジと味噌を合体させて、ある食事を振る舞うことになるのである。
高雄市中心部・三鳳中街へ
その後は高雄市中心部へ戻り、地域の商店街として重宝され賑わっている『三鳳中街』で、その他必要な食材を探すことにした。
ここは日本など海外の食品、ジェイミーも懐かしい思い出だと言う駄菓子の数々、台湾特産の乾物類、茶、包装資材などプロも御用達の幅広い品揃えで、伝統市場では入手しづらい物も比較的揃っているのだ。
もちろん、超級市場(スーパーマーケット)に行けば全て一度に揃ってしまうのかもしれない。
だが今回は、高雄の街に残る昔ながらの対面での商売の場を見聞きし、体験し、それを料理に取り込むこと、「ご馳走様」を体現することが命題なのである。
なんでもラクに手に入る現代だからこそ、ジェイミーがあちこち奔走して連れて行ってくれたのはとても贅沢な経験。
ところで、街中でよく見かける「外省麺」の看板。
外省(※1)という言葉から受けるイメージについて車中で話していたのだが、それはネガティブなものではなく、むしろ本場の味、な印象を与える感じなのだそう。
眷村という一つの視点を持つだけで目に入ってくる情報が変わるのだから、フィールドワークは面白い。
次回は郊外へ、山方面に向かいます!
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註
※1外省(人)(ワイシェン(レン)/がいしょう(じん))台湾では主に第2次世界大戦後、中国から台湾に移り住んだ人々をさす。
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店舗情報
【嚴記燒餠舗)】
住所:高雄市左營區果峰街12巷8號
定休日:月曜日
営業時間5:30~13:00
【寛來順早餐店】
住所:高雄市左營區 中華一路5-14號
定休日:月曜日
営業時間:早朝~お昼ごろ(変更あり※Googleにて営業時間更新あり)
※営業時間や定休日は変更になる可能性があります。参考としてご利用ください。