遠い国から来た牛軋糖(ヌガー)
はなうた食堂では、毎月、時光舎さん(大阪池田の中国料理と台湾茶のお店。台湾の茶藝館みたいな素敵な空間です)と一緒にお菓子セットの発送をしています。
今回はその中お菓子セットの中から台湾式のヌガーを紹介します。
ヌガー、世界横断
ヌガーは台湾の中国語では牛軋糖と書きます。
牛乳の「牛」に、ギュッと押しつぶす、集めるみたいな意味の「軋」の漢字、砂糖菓子やキャンディーを指す「糖」、
そして、読み方はニゥガー+タン→ヌガー。
フランスのヌガーに通じる発音なのが驚きです。(ヌガー(nougat)はクルミのラテン語を語源としているそうですよ)
台湾のヌガーを食べたことがある方は、日本のミルキーみたいなあの味わいをご存知かと思いますが、ヌガーの本場フランスの伝統的なヌガーには乳製品は入っていません。
卵白に、蜂蜜やシロップ、ドライフルーツが入っているところは台湾のものと同じなのですが、台湾ヌガーの一番の特徴と感じられるミルク成分がないんですね。
jacqueline macou,Pixabayより(いわゆるフランス式なヌガー)
中国のヌガーはミルク味だそうなので、ヨーロッパから伝わる途中で変化したのか、アジア独自のアレンジなのか、面白いですね。
作り方もとても似ていますが、やはり、乳製品(粉乳)を加えるプロセスで大きな違いが出てきます。
台湾式では、ペースト状になった生地に粉乳を加えることで、全体が固くなり、ヌガーらしい状態になるのに対し、フランスではさらに煮詰めて水分を飛ばすことで固くしていきます。
ヨーロッパとアジアでは、気候、とくに湿度が全然違います。お菓子作りでも、水分をどう扱うのかというところで違いが生まれたのかもしれません。
台湾のヌガーは、ナッツがたくさん入っているのも特徴ですが、これもまた、湿気でべたつきやすいお菓子の中で、良いアクセントになっている印象です。
雪のようなお菓子
ところで、今回作ったヌガーには、雪花酥(シュエ・ファ・スー)という名前を使いました。雪のような+サクサクした、という意味合いの名前です。
雪花酥はこのところ台湾でも流行しているお菓子で、ヌガーの中にビスケットがたくさん入っています。
ビスケットが入ることで、歯ごたえがより軽くなり、また、断面に何層ものビスケットが見える様子が、積もった雪の断面のようだという意味もあるようです。
世界各地、その土地ごとに好まれる味わいというものがあるのでしょう。フランスのヌガーの、ねっちりした口当たりからどんどん離れていく様子が、興味深いです。
さらには、雪花酥と見た目がそっくりな、雪Q餅(シュエ・キュー・ビン)というお菓子も存在するのですが、こちらは、ベースになる部分にマシュマロが使われています。
マシュマロとヌガーの成り立ちというのも実は結構似ていて、マシュマロはヌガーと同じ材料にゼラチンが入ることで、フワっと、あるいはクニっとしたあの食感が生まれています。
そして、雪Q餅のQは、クニクニ、キュッキュッという歯ごたえを表す言葉。
このことから想像できるように、雪Q餅は、弾力のあるやわらかな口当たりが特徴で、牛軋糖や雪花酥と比べると、より優しく万人受けするお菓子になっているといったところでしょうか。
(厳密には、雪花酥という名前でもマシュマロバージョンがあり、一部では両者は同じものとして扱われているようです…このあたりの感覚は少し不思議です…全然違うやん?)
渡台が再開された際には、この、見た目そっくりだけど少しずつ違うお菓子たちを食べて比べてみるのもまた良いかもしれませんね。
※ヌガーの起源には、中東地域からヨーロッパに伝わった説や、イタリア発祥とする説、十字軍がヨーロッパに戦利品として持ち帰ったという説、中国が起源という言い伝えなど諸説あります。
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