台湾に移住して、現地のディベロッパーに設計士として所属しつつ、 台中にてアートギャラリーも運営している木村一心 (きむらいっしん) さん。
一心さんの視点で高雄のまちづくりについて3回に分けて紹介する今回のコラム。
第2回目の建業新村についても前回と同じく大変興味深い内容です。台湾の「歴史」を活かしたまちづくり、ぜひご一読ください。
前回の高雄まちづくり~左營の歴史建築~はこちらからどうぞ(第1回前編)
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こんにちは、木村一心と申します。台湾に7年住み、まちづくりに携わる仕事をしています。
2021年にAkushuさんのWEBマガジンにて、台中の歴史建築や地方創生について、6つのテーマ※1でコラムを執筆させていただきました。読んでくださった皆さま、ありがとうございました。
今回、高雄の左營という街を拠点に活動する料理人・江舟航(ジェイミー・ジャン)さん※2の案内のもと、高雄の歴史的な街や建物を訪れる機会があり、左營で行われているまちづくりについて、3回のテーマに分けて紹介せていただきます。
前回の第1回で、左營の歴史建築をいくつかをご紹介させていただきましたが、今回はその中で登場した建業新村※3をピックアップし、歴史背景や開発の様子を具体的に解説していこうと思います。
建業新村を取材
前回のコラム、高雄まちづくり~左營の歴史建築~では建業新村という日本時代の建物について、歴史的背景や、現在に至るまでの建物の使われ方についてご紹介させていただきました。
今回は建業新村の現在の様子やこれからの開発計画について、今回案内していただいた江舟航さんをはじめ、現在建業新村を拠点に活動している事業者の方々に実際に伺った内容を皆さんにシェアしたいと思います。
ジェイミースタジオ
高雄出身の江舟航(ジェイミー・ジャン)さんは料理人でもあり、飲食関係のイベントを企画・運営し、地方創生などのプロジェクトにも積極的に取り組むコーディネーターでもあります。
高雄を中心に台湾各地で活動し、日本でも台湾の伝統料理を紹介するなどいろいろな場所を飛び回っている江さんですが、拠点となるキッチンスタジオは建業新村にあります。
「日食」という名前のスタジオで、料理の仕込みや開発、イベント(料理教室等)を行っています。
江舟航さんのスタジオにお邪魔したこの日は、果貿市場※4で仕入れた食材で台湾の家庭料理をふるまっていただきました。
江舟航さんが借りているこの建物は、美しいレンガの壁の中でひっそりたたずんでおりました。
実はこのスタジオには、小さなゲストルームがあります。民宿も兼ねてこの建物を運営しているそうで、とても珍しい組み合わせと感じましたが、その運営方法には大きな理由がありました。
以住代護:住んで護る
建業新村の土地は、高雄海軍が所有していますが、高雄市政府文化局が運営の方針を決めています。
廃墟だったこの土地を再生させる「以住代護」という計画が高雄市政府のもと2014年に開始されました。
建業新村は市街地からは離れた場所にあり、歴史的価値があるとは言うものの、廃墟群を人の集まる場所にすることはそう簡単ではありません。
「以住代護」は、住んで護るという意味が込められており、そこに移住する入居者と共に生活環境を作りながら、長期的に再生していく方針となっております。
その計画には、1期~3期の開発の段階が設定されています。第1期は、芸術家や建築士などの事業者に業種を絞り、貸し出しを行いました。
第1期の家賃は低く設定され、入居者は家賃の負担なく、静かな場所で創作活動を行うことができます。
また文化局は入居した芸術家や建築業者に区内の建物の修理や作品設置などを委託し、入居者が区内の生活基盤を整える仕組みを作ります。
そうして入居した事業者は、5年後にはその場所を退くという契約が交わされています。
芸術家や建築業者とは、5年間の間にこの美しい環境で創作活動をし自身の経験を充実させ、市街地などで独立していく構想をあらかじめ共有し合います。
現在は、第1期は終了し、第2期の入居者たちが建物を使用しています。
第2期で入居可能な事業者は民宿業者に限定されました。
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料理人であるジェイミーがゲストルームを持ち、民宿も運営しているその気になる理由は後編でどうぞ
註
※1実践!木村一心の台湾でまちづくりを含むこれまでの執筆記事はこちらから
https://akushu-taiwan.com/author/isshin-kimura/
※2建業新村
https://khh.travel/zh-tw/attractions/detail/1178
※3 江舟航(ジェイミー・ジャン)
日食生活というデザートスタジオを運営
https://www.facebook.com/eclipse2013/
※4 果貿市場
高雄市左營區中華一路9號