台湾に移住して、現地のディベロッパーに設計士として所属しつつ、 台中にてアートギャラリーを運営している木村一心 (きむらいっしん) さん。
台湾各地で手掛けた物件と連携し、展示やイベントを開催される一方、設計だけでなく建築の運営にまで携わっています。
そんな木村さんの目を通して触れる、台湾の建築、アート、デザイン。今回のテーマは「地方創生」について。建築を通した台湾のまちづくり紹介、最終回後編です。(前編はこちら)
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示範基地を作る
前編では、地方創生プロジェクトの事例をいくつか紹介しました。
後編は、実際現場ではどんなことを行っているのか。具体的に紹介していきたいと思います。
地方創生といっても様々なアプローチがあると思いますが、私たちは古い建物の再生をきっかけに、地域活性を行っています。
依頼を受ける案件は、複数の建物が連なるケースが多いです。
しかしすべての建物を一度に開発するほどの予算は基本的にないので、まず初めに、"示範基地"と言われる拠点を作ります。
示範基地(シーファンジィディ)というのは、"手本を示す場所"という意味で、范特喜微創文化の社員を一人派遣し、現地に住みながら運営を行う場所です。
示範基地の中には、小さなライブラリー空間や展示場所、イベントスペースなどが設けられ、地域住民も訪れることができるコミュニティースペースのような機能が備わっています。
地域住民・行政に伝える
示範基地で、一体どんな手本を示すのか。一番重要と考えるのが商業活動です。
示範基地に設置されたギャラリーや教室、屋外スペースなどで、まずは范特喜微創文化が主導でイベントを開催します。
現地の名産を使ったイベントを行えば、商品開発や新たなブランドの設立のきっかけにもなり、地域の人々が自営業や副業などを通して、個人でお金を稼ぐ方法を知ってもらいます。
またイベントを行う際の場所のレンタル費や集金方法など、支出入もしっかり共有することで、地域の人々が自主的にこの場所を使って、商業活動できるということを伝えます。
またイベントだけではなく、自身の店舗を作りたいという地域住民に対しては、行政と話合い、示範基地とは別にテナント空間を整備し、少しずつ敷地全体をリノベーションしていきます。
文化的な活動に関しては、行政からの助成金が得られることもレクチャーし、申請の方法を教えます。また建物の所有者や行政に向けても、地域住民の需要を知らせることで、行政自らが自主的に運営できるということを知ってもらいます。
ローカルで活動する若者
示範基地には、范特喜微創文化の社員が一人派遣されますが、各プロジェクト、すべて現地採用を行っています。
また夏になると、台湾の大学生は夏休みを利用した企業へのインターンシップを行います。
范特喜微創文化は候鳥計劃(渡り鳥計画)というプロジェクト発足し、毎年、各地方の大学から約30名のインターンシップ生を募集します。
30名は、それぞれ近くの示範基地に駐在してもらい、現地で、まちづくりや地方創生について学ぶのはもちろんのこと、地元で商業活動ができることを体験してもらい、卒業後より多くの選択肢があることを知ってもらいます。
地域ごとの連携
これまで様々な地方創生プロジェクトに関わり、各場所でたくさんのブランド、店舗が育ちました。
范特喜微創文化は、それらすべてを貴重な資源として捉え、各拠点同士の交流も積極的に行っています。
台中のリノベ―ション商業施設・緑光計劃で私が運営するアートギャラリーもその一つです。
日本から様々な作家が台中に訪れ、展示会を開催しますが、時々その作家の巡回展やイベントを地方でも行います。
現地の人に尋ねると、海外のアーティストの展示が開催されることによって、自分たちもその場所を使いたいという意欲が沸き立つそうです。
国際交流と地方創生の関係は、今後深く考えてみたいテーマだと思っています。
以上、今回のコラムでは地方創生について書かせていただきました。
今回読んでくださった方、第1回から読んでくださった方、ありがとうございました。
リノベーション、歴史建築、地方創生など、毎回大きなテーマだったので、概要をかいつまむ形になりましたが、それぞれの回の各章を一つ一つ深堀していきたいという気持ちにもなりました。
またどこかで紹介できる機会があればと思います。
コロナが明けた後は、ぜひ台湾の街を散策してみてください。
(前編はこちら)
※5 貢寮街有機書店
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※6 關西駐在所
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※7 河岸事務所
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※8 竹東文創藝術村