コラム

はなうた食堂のお気に入り(18) ~基隆/港町のミックスカルチャー・沙茶×咖喱

再びの台湾行きを計画中です。
今回予定している訪問先の一つが基隆。台湾北部にある港町です。
今回はこの街の思い出の味についてご紹介します。

沙茶醬

沙茶醬 台湾でもメジャーな牛頭牌のもの

沙茶醬(シャチャジャン)という調味料はご存知でしょうか。
東南アジアの料理「サテ」にヒントを得て、中華圏でアレンジされ広まった調味料で、海鮮ベースの個性的な風味が特徴的です。

インドネシアのサテとの共通点は、食べ比べてみても個人的には正直よくわからないのですが、オリジナルとの差異はともかく、台湾のスーパーに行けばどこにでも置いてあるところを見ると、すっかり受け入れられ、かなり浸透している調味料といえそうです。

台湾ではこの沙茶醬は牛肉の組み合わせが鉄板で、炒め物や鍋として親しまれているのですが、港町・基隆ではこの沙茶にさらに咖喱(カレー/咖哩とも・発音はガーリー)が加えられたものが人気。

シンプルな咖喱カレー味と並んで、地元の人達にとっては欠かせない故郷の味のようです。
客席が歩道にせり出した人気飲食店の前を通りかかると、どのテーブルにもそれらしき、カレー色のこってりした炒め物や炒麺が乗っています。

私もぜひ食べてみようと、基隆駅からは少し離れた復旦路という通りに向かってみました。
この通りは基隆の咖喱沙茶味発祥の地という説があります。実際同じような料理を出すお店が隣り合っているのがちょっとおもしろい。

すでに昼時を過ぎ、お客さんは少なめだったのですが、マップの評価が一番高かったこちらのお店「阿祿咖喱沙茶專賣店」(アル―ガーリーシャチャジュアンマイディエン)に入店。
ほがらかなお姉さんが迎えてくださいました。

阿祿咖喱沙茶專賣店・看板

選んだのは「 咖喱沙茶炒牛三鮮」(ガーリーシャチャチャオニュウサンシェン)。牛肉と牛モツの沙茶咖喱炒めです。

実はこの店に来る前にすでに少し食べていたので正直空腹ではなかったのですが、そこはさすがのカレー。熱々が運ばれてくると一気に食欲が湧いてきます。

そして実際とても美味しかった!

台湾のカレーは、日本統治時代に持ち込まれた日式カレーがルーツ。その慣れ親しんだまろやかなカレー味に沙茶の複雑な風味が加わり、さらには牛肉の力強い旨味もあって箸が止まりません。牛もつは味、食感共にアクセントになり、青菜のやわらかな味わいもバランスがいい。
なるほどこれは人気があるはず、心から納得です。(今こうやって思い出していてもまた食べたい!)

咖喱沙茶炒牛三鮮

咖喱沙茶炒牛三鮮

沙茶とカレー、どちらも台湾の人々にとっては「海の外からやってきた味」です。
基隆は大きな港によって栄えていた街なので、外国人や貿易に関わる人も多く、外国の味に触れる機会は当然多かったのでしょう。


また、肉体労働が主となる港では、しっかりした味つけの食事が好まれる素地も大きかったようです。食欲を刺激するカレー味に沙茶によってさらに複雑さが加わったものを、麺やご飯に合わせた「ガッツリ飯」は、日々消耗の激しい彼らにとっては最高のごちそうだったことでしょう。

外から入ってきた味が、その土地の事情とマッチして新たな味を生み、受け入れられてきた。そう考えると、味わい深さもさらに増します。

大変に賑わっていたであろう往時の港町の面影を残す、やや雑多な街並みと、歩道に置かれたテーブルでにぎやかに食事を囲む地元の人たち。
雨が多いとされる基隆ですが、香辛料がほどよく聞いた咖喱沙茶の味わいは、雨の湿度も吹き飛ばす、この街の人たちのパワーそのもののようにも思われます。

基隆は台北からだと1時間ほど。夜市も有名です。機会があれば、この街ならではのミックスカルチャーを、ぜひご自身の舌で味わってみてください。

 

参考文献;沙茶~戰後潮汕移民與臺灣飲食變遷/曾齡儀 前衛出版

Akushu
沙茶醬。これを入れておけば味が決まる!そんな万能調味料のイメージです。お鍋のタレにも欠かせません。カレーと合わせると美味しさも倍増しそうです。まだ食べたことがない方は次回ぜひ!(ピーナッツが入りが基本。アレルギーの方はご注意ください)

 

スポンサーリンク

  • この記事を書いた人
  • 最新記事

はなうた食堂調理室

台湾料理、お菓子を中心とした料理教室/実験厨房(大阪・池田市)。 つくる、たべる、をテーマに、美味しい喜びをシェアし合う場所です。

Copyright© Akushu ㅣ台湾とつなぐ・つながるWEBマガジン , 2025 All Rights Reserved.