台湾と日本の交流にたずさわっている人、日本と台湾をつなぐ活動をしている人を紹介するインタビュー。
記念すべき第一回は、Akushuウェブマガジンのメイン画像を書いてもらったAikoberry(アイコベリー)さんです。
2019年夏の阪急百貨店の催事でお会いして(その前からイラストはお見かけしていました)かわいいタッチで素敵だな、いつかお仕事をお願いしたいなと思っていたのです。
そうして描いていただいた、台湾の女の子が日本人の友達を朝ごはん屋さんにつれていく、というテーマの絵。お気に入りです。(ぜひトップページをご覧ください)
さて、Aikoberryさん。さっそくですがインタビュー、よろしくお願いします!
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Q1. アイコベリーさんの簡単な自己紹介をお願いします。
台湾・台北の淡水出身です。出版社の編集を経て、結婚をきっかけに現在は東京に住んでおります。
そしてイラストレーターとして、書籍や雑誌の挿絵、展示やイベント、似顔絵ワークショップなど多方面に活動中。フリーでデザインや編集の仕事もしています。イラストは食べ物や日常生活の出来事などを描くのが好きで、カラフルで丁寧なタッチのものを中心にしています。
Q2.アイコベリーさんがイラストを始めたきっかけ教えてください。
小さいころから絵を描くことが大好きだった私にとって、大きな転機は2回ありました。
ひとつめは、出版社での勤務を始めたばかりのころ、私はちょうどイラストがたくさん必要な書籍の担当となったんです。
そして、その当時の社長が突然「きみがこの本のイラストを描いたらいいよ!」と言い出したのです。
当時私は大学を卒業したばかり。
しかも私は美術系で学んだわけではないのです。社長がこの機会を与えてくれたのは、とてもありがたいものでした。
(「日本人のおしゃべり・押さえておきたい流行語」1,2 台湾の笛藤出版社より出版)
編集、デザイン、イラストをすべて一人で担当できたのは、とてもうれしいことでしたが、同時に本当に大変な作業でした。
同僚のみんなが支えてくれたり、意見をくれたりしたからこそ無事に出版できたのだと思っています。本当に、みんなには感謝しかありません。
ふたつめの契機は、日本に来て3年目の年に参加した日本人アーティスト「OHGUSHI」先生が主催する「寺子屋(イラストレーター交流会)」です。
そこで私は初めてイラスト業界にいる先生方、そして一緒に参加した日本のイラストレーターたちと交流する機会を得ました。
その時に先生たちが私にくださったアドバイスとイラストへの評価は私にとても大きな影響を与え、イラストレーターになりたい、と本気で考えるようになったのです。
そして、日本のイラストレーターの多くがみんな手書きで、その作品はとても細やかで美しいものばかりでした。
私はデジタルでしか絵をかいていなかったのですが、これをきっかけに手書きでイラストを描くようになりました。
この2枚は私がパソコンを使ってイラストを描いた時の作品です。
そしてこの2枚は手書きで描き始めたころの作品。
この頃は自身の訓練のために、はがきサイズの紙にイラストを描いていました。
Q3.台湾を離れ日本に住んでいらっしゃいますが、日本と関わるようになったきっかけは?台湾にいたころから日本に興味があったのでしょうか?
実はきっかけは高校1年生の時、書店で偶然見かけた日本のファッション誌「popteen」なんです。
その時の表紙が当時日本でも人気絶頂だった松浦亜弥ちゃん。
「こんなかわいい女の子がいるなんて!!」と思って、その後日本の雑誌をよくチェックするようになりました。
そして同じころ家族といっしょにW-indsとその後輩グループにあたるLeadにはまって。大体そのころから日本のカルチャーに触れだしたんじゃないかな。
大学もちょうど日本語学科に進学して、そして姉が「mixi」をはじめてみたらとすすめてくれて、そこでたくさんの日本の友達を作ることができたんです。夫ともmixiで知り合ったんですよ。
Q4. アイコベリーさんの絵は、カラフルで鮮やかなイラストがとても特徴的ですが、イラストを描くにあたりどのようなところからインスピレーションを得ているのですか?
散歩をしたり、雑談をしたり、トイレにいったり、寝てみたり…そんな日常生活の中の様々な出来事がすべてインスピレーションの元となっています。
いつも頭の中でふわっと突然画面が浮かぶんです。ああ、描きたいって衝動が来ます。
ただ、毎回スムーズに書けるわけではなく、そういう時はラフ画をいくつか書いてみたりします。
色づけの時は、もともと好きなカラフルな配色をするのと同時に、自分の作品がふっと明るい光を灯したときのように、見た人の心を明るくできたらと思いながら色をのせています。
(夫とよく行く焼き鳥屋さん)
Q5. 台湾では出版社で仕事をしていたとのこと、どのようなお仕事をされていたのですか?日本と台湾に関係するようなお仕事もあったのでしょうか?
台湾の出版社で働いていた時は日本語担当の編集者でした。主に日本語の学習書籍の担当で、自分で日本語を学ぶ読者に向けたものです。
試験用のテキストなんかも担当することもありました。
当時の社長は私に大きな権限を与えてくれていて、出した企画がどんな自由奔放なものであっても、売れそうと感じるモノは作ってしまう感じでした。
とっても自由で、すごく達成感がありました。
打ちのめされることもありましたけれど、私はやっぱり編集という仕事が好きです。
それで、出版社での仕事を辞めた後も、時々編集の仕事を請け負ったりしています。
でも今はどちらかというと、表紙のデザインだったりイラストやレイアウトを担当する編集の仕事が多いです。
Q6. 日本でイラストレーターとして活動する中、大変だったことと、とても楽しかったことを聞かせください。
大変だったこと…何だろう。大変だった…ではないですが、やっぱりイラストレーターの世界も競争が激しいのでどうやって長く続けていくかとか、そしてメンタルのバランスをどううまくとっていくのかは、今でも大変だなと思いつつかな。
楽しい時はイベントや展示の時に自分の作品を好きだと言ってもらえたとき。そして良い仕事をもらえると、やはり楽しいですよね。
Q7. アイコベリーさんがオススメする台湾のクリエイティブスポット/お気に入りやおススメの場所など教えて下さい。
東京に住むようになってから台湾には1年に1回里帰りするくらいなんです。なのでいろんなお店に行ったり、イベントに参加したりということは少ないので、今後私が行きたいと思っているところをあげてみますね。
「Mangasic」、「荒花」、「朋丁」、「par store」、「moom bookshop」、「床邊圖書館」などでしょうか。
あとは、特に私の個人的におすすめの場所なのですが。
台南の大崎(台南美術大学の近く)で長く地方創生に関わっている妹とその旦那さんが、今年お店をオープンさせました。
店名は「藝農號」(イーノンハオ)。
店内ではその季節の農産物が販売されているほか、台南芸術大学の学生が作った品々、台湾ビール、カクテル、季節によってはマンゴーかき氷や、紅豆湯圓(台湾のぜんざい)などもあります。
トークイベントや音楽ライブなども行われるとってもゆったりした良い空間です。
少し不便なところにあるかな、と感じるかもしれませんが、ぜひ行ってみてくださいね。
Q8.台湾のデザイン/イラスト関連の本でオススメやこれが好き!というお気に入りがありましたら、是非教えて下さい。
台湾のデザイン関係、、イラスト関係にすごく詳しいというわけではないので、私が知っていてなおかつ好きだなと思う雑誌を紹介しますね。
『熱帶季風』、『VERSE』(この本はデザイン本ではないと思うのですが、雑誌自体のデザインやレイアウト、文字などがとても好きなんです)。
あとは最近こっそりと注目している「nos:books」さん。nos:booksさんは独立系の印刷出版会社なのですが、ここの出版する本と選書はどれもすごく素晴らしいんです!
Q9.イラストや中国語教室などを通して日本の人に台湾のこと、台湾の人に日本のことを紹介するお仕事もされていますね。日本の人にもっと台湾のこんなところを知ってほしい。台湾でこんなことをするのがおすすめ、ということがあれば教えてください。
日本の人にもっと台湾のこんなところを知ってほしいと思うことは…。
実はもっと台湾人の日常会話とその文化を知ってもらいたいなと思っています。台湾語を混ぜたり、今流行ってる流行語を使ったり。
そうしたら台湾人との会話ももっとグッとくると思います。
あとは、個人的に台湾語のことわざがおもしろいなーと思っていて、日本の人にも知ってもらえたらなと思っています。
ただ昔、日本人の友人に台湾語のことわざの意味を説明したんですが、その面白さがなかなかうまく伝わらず、ちょっと言葉の難しさを痛感したこともありました。
台湾でこんなことをするのがオススメは…。
台湾人のような生活をして過ごしてみたり、台湾人みたいな喋り方をしたりすれば、面白いかもしれないです。
台湾人から親近感を感じてもらって、「好台喔!」(めっちゃ台湾っぽいわ!)と言われて、好感度上がりますよ。笑
Q10. 最後にこれからアイコベリーさんのやってみたいこと、今後のイベント情報を教えてください。
やってみたいことは…。
最近リソグラフ(印刷方法の1種)を使ったZINEを作ろうと取り組んでいます。
版を作るのはちょっとチャレンジ感があって大変なんですけど、でも作品を印刷したときの出来上がりを見ると、本当に病みつきなってしまう面白さなんです。
今後はリソグラフを使った作品も増やしていきたいと思っています!
(最近リソグラフを使用して作ったZINE)
今後の活動について。
12月19日~31日の期間、台中・二階圖書館で六人展一「屋根裏芸術祭」に出展します。
2021年の1月には東京・末広町のPARK GALLERYさんが開催するemoji企画展にも参加します。
さらに同じく1月、私が参加したリソグラフのワークショップのZINE成果展が吉祥寺のHANDoさんで開催されます。
また5月ごろ友人と二人展を行う予定です。
Instagramで出展の情報なども更新しているので、ぜひフォローお願いします。
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アイコベリーさん、お忙しいところインタビューに答えていただきありがとうございました!
イラストレーターとしての活動は日本に来てからというのは意外でした。
日本語ができても海外でフリーランスはやはり大変だと思います。そのバイタリティ、尊敬します。
そして形を変えながら日本と台湾に関わり続けているのがステキです。
アイコベリーさんのイラストは見ていると心が上向く素敵なものばかり。ぜひチェックしてみてください!
そして中国語でおしゃべりする教室の先生などもされているので、特に関東の台湾好きの方ぜひお教室にもお出かけください。
アイコベリー(Aikoberry)さん
WEB https://aikoberryworks.tumblr.com/
Instagram https://www.instagram.com/aikoberry/
アイコベリー先生の中国語deお喋り教室🇹🇼 https://www.instagram.com/aikoberry_taiwanlessons/
アイコベリーさんの紹介してくれた書店・ギャラリースペースなど
「Mangasic」
「荒花 wildflower」
「朋丁」
「par store」
「moom bookshop」
「床邊圖書館」
出版社
「nos:books」
妹さんご夫婦のお店(台南の烏山頭ダムから車で10分くらい)
「藝農號」