コラム

日台交流 ・日本×高雄食文化ワークショップー穭の高雄紀行(4)

2024年1月、高雄の料理人・パティシェである江舟航(ジェイミー・ジャン)氏が「日本料理人舊城飲食工作坊」というイベントを開催しました。

イベントの内容は大まかに下記の3点。

ジェイミーの住む高雄・左営に日本から料理人を招き左営を中心に高雄各地を巡りその食文化や食材の特徴を知る。

各地を巡りながら食材を集め、集めた食材と高雄でのインスピレーションを元に日本の料理人が高雄の人々に料理をふるまう。

さらに料理や⾷材の特⾊、左営との共通点や違いについてジェイミーと日本の料理人とでトークショーを行う。

今回ジェイミーから招へいを受けた穭(ヒツジ)さんにイベント期間中の様子をまとめてもらうことにしました。

台湾にも詳しい穭さんの綴るイベント旅記録。

丁寧に丁寧に綴ってくださっています。
3日目は後半はジェイミーの故郷六亀へ。

3日目後半。ジェイミーの故郷六亀へ

六亀で野生のお茶「山茶」に出会う

夏でも涼しく過ごしやすいという六亀(リウグゥイ)の山の木々が左右に迫る中、集落を少し抜けた所にお店を構えていらっしゃるのが『順發茶園』(シュンファチャ―ユエン)。

こちらに伺って初めて目にした「山茶」について記しておこう。

山茶(シャンチャー)とは、元々台湾に生えている樹齢100年〜300年の茶の木の葉で作られたお茶で、その高さは人の腰ほどの高さではなく、なんと約8メートルにも及ぶ高木。

よって、茶農家さんは危険と隣り合わせで高い木に登って茶葉を採取する。

見せていただいた文献によると、現在の南投付近で1645年ごろにオランダ人が見つけ、今では原生の台湾山茶の採取地としては六亀が在来種数、規模ともに一位を誇るらしい。

 

実際、近年は国際的な賞を受賞するなど台湾原生山茶の人気は高まっており、こちら順發茶園でも生産性を上げ、且つ安全に茶葉を採取出来るよう人里近くに移植し、低木で栽培する野放栽培(自然栽培のこと。有機農法的な利点も考えて)を取り入れているそうだ。

山茶

色々なお話を伺いながら、乳香や椿のようなフローラルな香りを放つ微発酵の白茶、水色も美しい完全発酵の紅茶、そして山茶酸柑茶という黒くて丸くてゴツゴツしたお茶を試飲させていただいた。

酸柑茶はとても硬いのでお茶を淹れるのにハンマーが必要となります

酸柑茶(スァンガンチャー)とは客家に伝わる柑橘類を使ったお茶で、なかなかインパクトの強い見た目。

調べてみると、文旦(ポメロ、ザボン、ボンタンとも呼ばれ楊枝甘露でおなじみのグレープフルーツに似た柑橘)を使った客家老柚茶、レモンを使用した客家檸檬茶などもあるようだ。

柑橘系flavour tea客家版といったところか。

順発茶園の酸柑茶は、虎頭柑という大きめの柑橘フルーツを使う。

果実の中身をくり抜き、製茶済みの山茶の茶葉と取り出した果肉を混ぜて再度詰め込み、乾燥、焙煎、蒸すといった手間と時間のかかる工程を経てようやく完成する。

そのような貴重なお茶を味わわせていただいたところ、驚いたのがその喉ごしの爽やかさ!

白茶や紅茶も5グラムの茶葉から8煎くらいは出るとのことだが、山茶酸柑茶は煎を進めるごとに程良い酸味や香りが逆にだんだん濃くなる印象を受けた。おかわりが止まらない…

台湾ドラマ「茶金」を観ておいて良かった

また、お茶を淹れるときに使う水についてよく議論されるが、この時教えていただいたのが「何を使って淹れるか」。

陶器のティーポットは茶葉の特徴を吸ってしまうので、色々な種類の茶葉を使わずに一種類の茶葉専用で使った方が良い。

逆にその心配が無いのが磁器のポットなので、都度違う茶葉を使っても大丈夫。水道水と浄水とで沸かすケトルを分けた方がいいと聞くが、ティーポットも然りと言うことか。お茶の世界は本当に奥深い。

台湾で唯一の胡椒の産地へ

3日に渡った高雄の食を巡る道中もついに次の目的地がラスト。

それは、太古の昔から最も貴重な香辛料とされてきた胡椒だ。台湾で唯一胡椒が採れる『獅山胡椒園』に連れて来てもらった。

一般的に胡椒の産地は南北緯度20度以内とされるが、この場所は北緯23度。1973年に現在の屏東科技大学と共同で台湾原産の胡椒を生み出したとのこと。

胡椒の木は直射日光を嫌うため、この農場ではオリーブやマンゴーをシェードツリーにしていて、胡椒のツルがしっかりと巻きついている。

日陰の役割だけでなく、雨が降らなくてもシェードツリー側から水分を取るという働きもあり、人の手はあまり掛けず甘やかさずに放置して育てるのがコツなのだそう。

黒胡椒も白胡椒も、最初は赤い実

黒胡椒と白胡椒が作られていて、夏と冬の年に2回収穫。通販などは一切行っていないため、こちらの胡椒を求めるシェフ達は台湾各地からはるばるここまで買いにやって来る。

この他、袋入りの粒胡椒も販売しています。

また、園内では胡椒を使ったおいしいコース料理も提供している(10名以上での予約、要問い合わせ)。

この日ご馳走になったのは、外側とお腹の中に黒胡椒をたっぷり塗って焼いたローストチキン、白菜スープ、胡椒ソーセージ、エビの胡椒炒め、龍鬚菜(ハヤト瓜の葉)。

5品それぞれに胡椒の生かし方が違っていて、とても美味しくとても参考になった。

もちろん私たちも胡椒を購入、帰国後さっそく白胡椒の方を開けてみたところ、強くてスパイシー且つ爽やかな香りにノックアウトされた。美味!

追い胡椒も山盛り。

帰り道。コーヒーとレモン雑感

胡椒で体も温まり、充実の一日を終えた頃にはすっかり日も暮れ、いよいよ明後日に迫るイベントに向け車中打ち合わせをしながら帰り道についた。

ドライブのお供には、台湾のカフェやコンビニではすっかり定番化した檸檬氣泡咖啡すなわちレモンソーダコーヒー。苦味と甘味と酸味、三位一体とはよく言ったものだと飲むたびに膝を打ってしまう。

炭酸の入らないスティルのものもあるし、アップルなど違うフルーツのバリエーションも色々あるようなので、次回のお題にとっておこう。

Espresso Romano さっぱり爽やか!

通称「シシリー」と呼ばれ親しまれているこのコーヒー。セブンイレブンでは「西西里風檸檬氣泡咖啡 Sicily Lemon Sparkling Coffee」、人気チェーン店『DONUTES COFFEE 』でも「西西里檸檬咖啡 Lemon Ice Coffee」など、レモンと言えばシチリアレモンという発想の呼び名がなんとも楽しいのだ。

鳳山舊城東門(鳳儀門)。城門も城壁も非常にきれいな状態で保存されている。

より本格派のものとしては、初日に訪ねた見城館で教えていただいた鳳山舊城東門(かつての城の門)から少し歩いた所にあり、これまた古い建物の空間使いが独創的で心地いいコーヒースタンド『涼倆商行』にて「小農檸檬美式 Espresso Romano」を発見。
シチリア島ならぬ、台湾・屏東産の無農薬レモンを使用しているそうで、地産のレモンをふんだんに味わえる。

建物と建物を繋ぐ吹き抜けの中庭でくつろげます

さらに、「檸檬美式Plus Espresso Romano+」という檸檬マシマシバージョンに至っては、檸檬の皮までまるごと使った特殊な方法によりフォーム状になっていて、まるでクリームが入っているかのような泡立ちなのに、しっかりレモンの味も楽しめる一品(逸品)だ。

Espresso Romano+ レモニー且つクリーミー!

 

次回、この旅で巡り会った食材たちがどう振る舞われたか、イベントの様子をご紹介します!

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店舗情報

【順發茶園】
住所:高雄市六龜區新發里和平路251~5號

【獅山胡椒園】
住所:高雄市六龜區新發里獅山78號
営業時間:9:30-17:00
(※食事は10名から、要予約。中国語対応)

【涼倆商行】
住所:高雄市左營區城峰路313號
営業時間:公式Instagram参照(上記リンク先より)
定休日:火曜日

※営業時間などは参考としてください。事前にSNSなど確認の上お出かけください。

 

 

 

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那覇市の国際通り近くの路地の中にある古民家を使用したカフェ。 店主たちが訪れた国で味わった食事やスイーツ、ドリンクを提供しています。 その時々でメニューが変わるお店です。 旅に思いを馳せながらお過ごしください。

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